『催眠聖女 ローザ・フェアリー』(19)

 ローザはトキロウを守る為にカグラと戦う決意を固めた。 セラとトキロウという新しい家族の為に...... 二人の未来の為にローザはカグラとの戦いに挑む。 しかし、ローザは足が震えていた。 ローザ自身、人と争う、戦うといった経験は今までしたことが無かった。 人と争ったり、戦ったりする事は平和を愛するローザにとって、最も忌み嫌うものだったからだ。 人は誰しもが平和を願い、争いなど求めていないと信じていた。 信仰を信じ、神に祈りを捧げていれば人は争いをしないと思っていた。 

 しかしこのカグラは違う...... 話し合いなど全く通用しない人間だ。 自分にとって邪魔な存在は全て抹殺する思想を持っている。 その為なら、関係ない人間さえも平気で巻き込み利用する。 まして自分の息子ですら手に掛けようとしている。 他人に対する愛情はおろか、実の息子にすら愛情が無いカグラに、ローザはカグラを悪魔のような存在に感じていた。 カグラから放たれる邪悪な意思は、とても人のものとは思えない。

 その邪悪な存在から大切な物を守るために初めて戦いに挑むことになった。 しかし、初めての戦いの相手は『神の化身』と言われる超常的な力を持つカグラだ。 そのカグラから発せられる圧倒的なオーラに、ローザは気圧されそうになる。 しかしここで逃げるわけにはいかない。 ローザは勇気を振り絞ってカグラを睨みつけた。 無理にでも強がっていなければ、心が挫けてしまいそうになるからだ。

 「ふふふ..... 精一杯、強がっているようだが、本当は私が怖くて仕方がないのであろう? 足が震えているではないか!! ふはははは!!」カグラは震えるローザを見て嘲笑った。 ローザの強がりを見抜いていた。 精一杯強がって見せているローザが滑稽だった。

 (我が主『メスマリア』よ...... 私に勇気をお与えください!! 私の大切な家族を守る為、主の力をお貸しください!!)ローザは心の中で神に祈った。 神頼みと笑われても良いから、少しでも勇気とカグラに立ち向かう力が欲しかった。 正直、カグラに戦いを挑んだことを少し後悔していた。

 「たとえ何者であろうと、この私に楯突いた者は許さん...... 私の恐ろしさを存分に味合わせてやらねば気が済まぬわっ!! 私に挑んだことをそなたの信じる神の前で後悔するがいい!!」カグラは怒りの表情を浮かべた。 身の程もわきまえず、戦いを挑んで来たローザの行動が許せなかった。 カグラの凄まじい怒気が教会全体を揺るがした。

 (なんて怒気なのっ!! とても勝ち目は無い...... ローザ!! しっかりするのよ!! 弱気になっては駄目!!)カグラの凄まじい怒気を受けて、ローザは心が折れそうになったが、何とか自分を奮い立たせた。 

 「ではそろそろいくぞ...... ぬううううっ!!」カグラは両手の人差し指を伸ばして手を組んだ。 そして『催眠法力』を練るため、気合を込めて念仏を唱え始めた。 

 「ローザさん、気をつけて!! 母さんが『神催眠の法』を使い始めた!! 気持ちを集中させないと、あっという間に母さんの術の餌食になります!!」カグラが『神催眠の法』を使い始めたのを見たトキロウは、ローザに警戒するように言った。 

 カグラが念仏を唱え始めると、カグラの身体から黒い霧のような物が噴出し始めた。 吹き出した黒い霧は、どんどんとカグラの頭上に溜まってゆく......  

 「な、、、 あの黒い霧のようなものは一体何っ?!」カグラから発せられた黒い霧を見てローザは動揺を隠せなかった。 これから一体、何が始まろうというのか?

 「あれは、『神催眠の法 幻影眠の術』です!! あの黒い霧は母さんの催眠法力が『幻物化』した物です!!」動揺するローザに、トキロウが黒い霧の正体を伝えた。 

 「幻物化?! それは一体......」ローザはトキロウの言葉の意味がわからなかった。 これまで『催眠聖女』として催眠術を勉強してきたが、こんな現象は見た事も聞いた事も無い。 ローザの知らない未知の力であった。

 「ふふふ...... 今、其方に身を以て教えてやろう。 我が力を思い知ると良いわ!!」カグラが更に激しく念仏を唱えた。 すると黒い霧はローザの前で集まり始め、巨大な人の形になっていく...... 

 「こ、、、これは...... 黒い霧が人の形に......」黒い霧の人形は、みるみる教会の天井を覆うほど巨大化し、ローザはその異様な光景をただ黙って見ているしか無かった。 

 そして黒い霧は完全に人型の黒い巨人となった。 「これは、黒い巨人...... これが催眠術だとでもいうの......?」ローザは目の前で起きている現象が催眠術であるとは信じられなかった。 ローザの理解が及ばないカグラの催眠術を目の当たりにし、ローザはただ呆然とするしかなかった。

 「ふふふ...... 我が『催眠法力』は、催眠による幻覚を幻物と化すことが出来るのだ。 その意味を今、教えてやろう!!」カグラが黒い巨人に念を送り始めた。

 すると黒い巨人が動きだし、そしてローザに向かって、”うぉおおおおおおおーーーーーーっ!!” という凄まじい轟音の咆哮を浴びせた。 その咆哮は衝撃となりローザは身体が吹き飛ばされた。 

 「きゃあああああっっっ!!」咆哮を受けたローザは悲鳴をあげながら吹き飛ばされた。 吹き飛んだローザの身体が激しく床に叩きつけられる。 

 「ローザさん!!」吹き飛ばされた床に叩きつけられたローザの元にトキロウは駆け寄った。 「大丈夫ですか、ローザさん?!」

 「今のは何なの?! なぜ身体が...... 幻覚では無いの......?!」ローザは自分の身に起きたことが理解出来なかった。 なぜ、身体が吹き飛んだのか? 催眠による幻覚なら身体が吹き飛ぶはずは無い......

 「あの黒い巨人は確かに母さんの催眠術による幻覚ですが、母さんの『催眠法力』によって実際に『催眠法力』にかかった人間に影響を及ぼすんです...... だからローザさんはすでに母さんの『催眠法力』にかかっているので、あの黒い巨人の影響を受けてしまいます」トキロウがローザの身に何が起こったのかを説明した。

 「まさか...... そんな事が出来るなんて信じられない......」トキロウの説明を聞いてもまだローザは信じられなかった。 そんなことが現実に起こるとは到底ありえない。 

 「信じられないかもしれないけど、本当なんです!! 今は理解してください。 理解しないと、このままやられてしまいます。 理解出来ないで戸惑っていると、あの術の思う壺です!! まずは理解し、実際に起こっていることだと認識してください。 そうしなければ、あの術に対抗出来ません......」トキロウが理解に苦しみ戸惑うローザに対抗する方法を伝えた。

 「理解する...... それがあの術に対抗する方法なのね?」

 「はい!! 自分は相手の催眠術にかかって幻覚を見せられている。 そしてその幻覚は実際に自分の身体に影響を及ぼすと思ってください!!
そして、気持ちを集中させて幻覚を恐れないように心を強く持ってください!! あの術は幻覚で相手に恐怖を与えて、恐れ戸惑う心の隙を生み出し、隙の生まれた心に法力による強力な暗示で相手を攻撃する術です」

 「じゃあ、私があの黒い巨人を恐れて戸惑っていたから、吹き飛ばされたのね? 恐れなければ、あの術に対抗出来るということ?」ローザはトキロウの説明を聞いて、ようやく術の正体を掴んだ。

 「そうです!! 恐れや戸惑いを消してください。 そうすれば、あの黒い巨人は消える筈です。 あれは『催眠法力』によってローザさん心に母さんが生み出した幻影です。 黒い巨人は目の前いるのでは無く、ローザさんの心の中にいます!! それを打ち消してください!!」

 「...... 私の心の中に...... わかったわ!! ありがとうトキロウさん!! やってみるわ!!」トキロウの助言を受けて、突破口を見いだしたローザは、再びカグラに立ち向かうべく立ち上がった。 

 (トキロウさんのアドバイスの通り、まずは心を落ち着けないと...... あれは催眠術による幻覚で目の前にはいない...... そして黒い巨人は私の心の中にいる。 黒い巨人の攻撃が実際に身体に影響を及ぼす力があるというのであれば、現実と同じ対処をすれば良いという事ね!!  恐れるなローザ...... 勇気を持って立ち向かうのよ!!)ローザはトキロウのアドバイスに従い、まずは気持ちを落ち着かせた。 そして恐怖を振り払うように努めた。 

 「ふふふふ...... 無駄な事よ。 そんな事で私の術は破れはせぬ...... 我が、『幻眠巨人』に踏み潰されるがいいわ!!」カグラは立ち直ったローザを見て、更なる攻撃に出た。 カグラが念じると、巨人は巨大な足を持ち上げて、ローザ踏み潰しに来た。

 「危ないローザさん!!」巨人に踏み潰されそうになるローザに向かってトキロウが叫んだ。

 巨人の足がローザを踏み潰しそうになった瞬間、ローザは身体をよじって間一髪かわした。 ”ドスン”と巨人の足が地面を踏んだ瞬間、凄まじい音と共に地響きが起きた。 教会全体が地響きで揺れている。

 「なんて威力なの...... 踏み潰されたら一巻の終わりだった......」間一髪避けたローザだったが、そのあまりの威力に背筋が凍った。 せっかく立ち直ったローザの心を巨人の攻撃は一発で砕いてしまった。

 そしてその凄まじい威力にローザは腰が抜け、動けなくなってしまった。 とても幻覚とは思えない凄まじさに、幻覚だと理解はしていても本能が恐れてしまっていた。  

 「どうした? 腰が抜けたか? 私の術は頭ではわかっていても、人間の本能に直接攻撃するのだ。 誰も本能には抗えない...... さぁ、次の攻撃がかわせるか!!」カグラが念じると、動けなくなったローザに向かって、再び巨人がローザを踏み潰しに来た。 

 「身体が...... 動かない...... このままではやられてしまう。 メスマリア様、どうか私に力をお貸し下さい!!」絶対絶命の危機にローザは、もう神に祈ることしか出来なかった。 

 すると、突然ローザの手にはめられていた指輪が輝き出した。 指輪から発せられた光は瞬く間にローザの身体を包み込んだ。 そしてそこへ、黒い巨人の足がローザを踏み潰した。 かに思えたが、黒い巨人の足はローザの寸前で止まっていた。 ローザを包みこんだ光が巨人の足からバリアのようにローザを守っていた。

 「こ、、、、これは?」突然輝き出した指輪の光が自身を守ったことに、ローザは驚きを隠せなかった。 今まで指輪がこんな現象を起こした事は一度も無かった。

 「何だ? あの指輪の光は......」カグラも驚きを隠せない様子だった。 なぜ、自身の術が効かないのか? あの光は一体何の力なのか?  一体、ローザの身に何が起こったというのか? カグラも今まで経験したことが無い現象だった。

 「指輪の光がローザさんを守ってる...... それにあの指輪の光は、世羅子や母さんのものとも違う...... あの指輪は一体?」トキロウも指輪がローザを守ったことに驚いた。 指輪から放たれる光はセラや母であるカグラのものとは違っているように感じた。 何かもっと神々しい感じがする。 セラの放つ光に近いが、どこかが違っていた。



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 セラは急いで教会に向かっていた。 早くいかなければ、ローザとトキロウが危ない。 そして急ぐセラ目掛けて、何かが飛んできた。「はっ!!」自分目掛けて飛んできた物に気づいたセラはとっさに避けた。 セラが避けると飛んできた物は地面に突き刺さった。 それは日本の忍者が使うクナイのような武器だった。

 「これは? まさか......」セラは武器を見て、敵の正体が読めた。 

 すると物陰から、白い忍者服を纏った集団が現れた。 そして直ぐにセラを取り囲む。 手にはクナイを持っていた。

 「やはり白眠衆!!」現れた集団はカグラ配下の集団である『白眠衆』であった。 どうやらセラが来るのを待ち伏せしていたようだ。

 「世羅子!! カグラ様の命により、お前をこの場で抹殺する!!」『白眠衆』の一人がセラに向けて言った。 

 「待って!! 私はトキロウを守りにいかなければならないの!! 邪魔をしないで!! 道を開けて......」セラが『白眠衆』に向かって叫んだが、無駄な事はわかっていた。 しかし今は一刻も早くトキロウの元にいかなければならない。 ここで足止めを食うわけにはいかなかった。

 「問答無用!!」セラの訴えも虚しく、『白眠衆』は問答無用でセラに襲い掛かってきた。 セラに攻撃を開始した『白眠衆』は一斉にセラに向かってクナイを投げつけてきた。 四方八方からクナイがセラに向かって飛んでくる。

 だが、セラは飛んでくるクナイを避けようともせず、何故か目を閉じた。 するとセラに向かって投げられたクナイがセラの身体に命中する前に空中で静止した。 そしてバラバラと地面に落ちていく......

 「なんだ今のは?! 何をしたんだ世羅子っ?!」クナイが突然静止したのを見た『白眠衆』たちは何がどうなっているのかわからなかった。 なぜクナイは空中で静止してしまったのか? 

 「もう一度行くぞ!!」『白眠衆』は再びセラに向かってクナイを投げつけた。 しかし、またしても先ほどと同じようにクナイはセラの身体の手前で静止し、地面に落ちてしまった。

 「これは...... 世羅子の新しい能力なのか? こんな能力があるとは聞いていないぞ......」今まで知らなかった能力を発揮したセラに、『白眠衆』は戸惑った。 『白眠衆』はカグラ直属のエリート部隊であり、その調査能力は世界中の諜報機関を超越しているほどだった。 しかしその『白眠衆』でさえ、セラにこのような能力があるとは知らなかった。

 「はぁはぁはぁ......」『白眠衆』の攻撃を凌いだセラだったが、激しく息が上がっていた。 (やっぱりこの力は激しく体力を消耗するわ...... カグラとの対決に備えて力を温存しておかないといけないのに...... このまま攻撃をされ続けたら、力が尽きてしまう...... これ以上消耗したらカグラと戦えない......)能力を使って攻撃を凌いだセラだったが、激しく体力を消耗していた。 この能力は体力の消耗が激しい。 使い続ければ、力が尽きカグラと戦うことが出来ない。 能力で攻撃は凌いでいるが、セラは追い詰められていた。

 「そうか!! この力は相当に体力を消耗するようだな? ならば直接攻撃だ!!」『白眠衆』はセラの息が上がっているのを見て、セラが体力を激しく消耗していると見抜いた。 そしてセラの消耗を見抜いた『白眠衆』は今度はクナイを投げつけず、手に持ち一斉にセラに攻撃を加える事にした。

 『白眠衆』はジリジリと間合いを詰めていき、セラに襲い掛かろうとしていた。 そして一人の『白眠衆』がセラに襲い掛かり、クナイでセラを突き刺しにきた。 セラは攻撃をかろうじてかわしたが、服を切られた。 すぐさま別の『白眠衆』がセラを攻撃してきた。 セラはかろうじて攻撃をかわし、攻撃を避けると同時に、相手の顔に手を当て「眠れ!!」と暗示を与えた。

 だが、『白眠衆』にセラの暗示は効かなかった。 「術が効かない...... まさか『砕眠丸』を飲んでいるんじゃ?」セラは自分の術が効かなかった事で、『白眠衆』たちが『姫美島家秘伝の丸薬 『砕眠丸』を飲んでいるのではないかと思った。

 「その通りだ!! 我らには催眠は効かぬ。 これでお前の命運は尽きたな......」セラの催眠を無効化した『白眠衆』は勝利を確信していた。

 「なんてことを......」セラは『白眠衆』が秘薬を飲んでいたことを知り驚愕した。 この秘薬は劇的に催眠への抵抗力を高める効果があるが、命に危険が及ぶ副作用もあった。 薬を服用したものは高確率で死に至る為、『姫美島』家では使用を禁じられた禁薬となっていた。 

 「我らは既に死を覚悟している!! お前を抹殺する為なら手段は選ばない!! カグラ様と『姫美島』家の為に、”世羅子” お前を必ず抹殺する!!」『白眠衆』の面々は既に死を覚悟して、この任務に臨んでいた。 凄まじい覚悟と気迫である。

 『白眠衆』の決死の覚悟に、セラはカグラという人間の恐ろしさを改めて思い知った。 部下でさえ、自らの目的の為ならば平気で捨て駒にする冷酷さと、手段を選ばず自らを脅かすものを必ず抹殺しようとする執念......  カグラの性格は理解しているつもりだったが、自分の認識がまだまだ甘かったことを後悔した。 

 セラは迷っていた。 このまま『白眠衆』との戦いが続けば、この後に控えているカグラとの戦いの前に体力を大きく消耗してしまう。 体力を消耗した状態では、到底カグラ相手に勝ち目は無い。 かと言って決死の覚悟で挑んでくる『白眠衆』は、手加減して倒せる相手でも無い。 一体、どうすればいいのか? 何とか体力を減らさずに『白眠衆』を退ける方法はないのかと必死に考えていた。

 「覚悟しろ世羅子っ!! 全員一斉攻撃だっ!!」迷っているセラに、『白眠衆』は一斉攻撃の態勢になった。 上下左右、四方八方からの攻撃である。 いくら世羅子でも、この攻撃から逃れる術は無い。 そして『白眠衆』が一斉に攻撃に出ようとしたその時、”ウオーーーン!!”と何かの雄叫びのような声が鳴り響いた。

 「何だ?! これは雄叫びか?」一斉攻撃に出ようとした瞬間『白眠衆』達は、雄叫びを聞いて攻撃を止めた。 そして無数の何かの足音が聞こえてくる。 その無数の足音は徐々にこちらに近づいてきた...... 『白眠衆』達は近づいてくる足音を聞いて、あたりを見回し始めた。

 「一体、この足音は何だ?! 何かがこちらに向かって来ている!!」近づいてくる足音に『白眠衆』達は警戒を強めた。

 「来てくれた!!」セラには足音の正体がわかった。 そして”しめた!!”といった表情になった。 

 すると山に続く道から、狼の群れがこちらに向かってきた。 その数は数十頭はいる。 足音の正体は狼の群れであった。

 「狼の群れだと?! なぜここに来たんだ? 世羅子、お前が呼んだのか?」狼の群れがやってきたのをみて、『白眠衆』は驚きを隠せなかった。 なぜ、狼の群れがこちらに向かってくるのか? それはセラが呼んだものなのか? 

 「私が呼んだわ!! もしかしたら待ち伏せがあるかもしれないと思っていたから、彼らに協力を求めたの。 今は町の人たちはみんな眠っているから好都合だった。 頼もしい助っ人よ!!」セラは狼たちが助けに来てくれたことを喜んでいた。 これで形勢は逆転した。

 狼の群れは瞬く間に『白眠衆』たちを取り囲んだ。 そして牙を剥き出して激しく威嚇し始める。 狼達に取り囲まれた『白眠衆』達は、円陣を組んで防御の態勢になった。 狼達に囲まれて、セラを攻撃する事は出来なくなった。

 「く、、、 たかが獣ごとき、、、」『白眠衆』の一人が狼を飛び越えてセラに襲い掛かった。 しかし飛びかかった瞬間、一頭の狼が体当たりをくらわした。 狼の体当たりをくらった『白眠衆』は地面に倒れた。 そしてすぐに狼達が倒れた『白眠衆』を取り囲む。 

 「くそ、、、 これでは迂闊に動けない、、、、」狼達は自分たちから襲ってくる事は無かったが、少しでもセラに危害を加えようとすれば、攻撃をしてくる事はわかった。 それに無数の狼に囲まれていては、セラに攻撃を加えるのは、流石の『白眠衆』でも至難の業だった。

 セラの前に一回り大きな狼がやってきた。 群れのリーダーだ。 その面構えは歴戦の戦士のような威厳があった。 セラはリーダーの頭をそっと撫でた。 「ありがとう!! 来てくれて...... 助かったわ」セラはリーダーの頭を撫でながらお礼を言った。

 お礼を言われたリーダーは天に向かって吠えた。 すると他の狼達も一斉に吠え始めた。 セラを助けたことを誇るような遠吠えだった。 そして狼達の遠吠えが止むと、リーダーがセラに向かってクイッと頭を動かした。 それは何かの合図のようだった。

 「わかったわ!! ここは任せるから、私はトキロウたちを助けにいくわね!!」セラはリーダーの心を汲み取り、この場は彼らに任せることにした。 そしてセラは『白眠衆』を狼達に任せ、急いで教会へと向かって行った。

 「待て、世羅子!!」『白眠衆』がセラを追おうとしたが、狼達が『白眠衆』をブロックした。 これではセラを追いかけることが出来ない。 

 『白眠衆』の面々はセラが狼達と意志を通わせていることに驚いていた。 セラがこんな能力を持っている事を全く知らなかった。 「世羅子にこんな能力があったとは...... カグラ様...... 世羅子はやはり恐るべき奴です。 どうかご武運を......」もはや任務を果たすことを出来なくなった『白眠衆』たちは、これから始まるであろう、セラとカグラの戦いの行末を案じていた。 

 セラの力は想像を超えている。 カグラの力を持ってしても容易に倒す事は出来ないだろう...... ”セラ対カグラ” その戦いの勝敗の行方について『白眠衆』たちでさえカグラの勝利を確信出来なかった。 

 (トキロウ、ローザ、今いくわ!! どうか無事でいて...... カグラ、これでようやくお前と戦うことが出来る!! 私はお前には決して負けない!!)教会に向かいながら、セラは必ずカグラを倒すと心に誓った。 





「催眠聖女 ローザ・フェアリー」(19)終




(20)へ続く



















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