『催眠聖女 ローザ・フェアリー』(21)

 「セラッ!!」

 「世羅子っ!!」

 セラが教会に戻ってきた。 トキロウとローザはセラが教会に戻ってきたのを見て、安堵の表情を浮かべた。 暴君カグラを倒せる可能性のある、ただ一人の存在『奇跡の力を持つ少女 セラ』が戻ってきたのだ。 圧倒的な力を持つカグラの前に、絶望すら感じていた二人だったが、セラが戻ってきた事で希望が見えた。 セラならきっとカグラを倒してくれるはずだ!!

 セラは急いで戻ってきたせいか、少し息が上がっていた。 そして、まだ呼吸が整っていないセラだったが、カグラの姿を確認すると、一瞬で険しい表情になった。 「カグラ......」やはり予想した通り、カグラはこの国に来ていた。 カグラの姿を見たセラの心の中に、激しい怒りの感情が湧いてきた。 セラはキッとカグラを睨みつけた。 

 扉に背を向けていたカグラだったが、セラの怒りの視線を感じ取ったのか、ゆっくりと扉の方に向かって振り向いた。 そしてセラの姿を確認する。 カグラは直ぐにはセラと視線を合わせなかった。 あえて視線を合わせず、じっくりと観察するようにセラの全身を舐めるように見ていた。 そして一通りセラを観察し終えると、睨み付けるセラと視線を合わせ顔をあげて見下すようにセラを見た。 そして不敵な笑みを浮かべながらカグラが口を開いた。「ようやくきたか、世羅子!! 随分と遅かったではないか......? 一人だけ逃げたかと思ったぞ...... ふふふ......」カグラはまるでセラを嘲笑うかのように言った。 その言葉と、セラを蔑むように見る目には明らかに邪悪な意志が伺える。  

 「カグラ......」セラは蔑むように自分を見ているカグラをひと目見て、以前よりも遥かに邪悪さが増しているのを感じ取った。 カグラの身体から発せられる怨念のようなものが、遥かに強くなっているように見えた。

 しばしカグラと睨み合ったセラだが、直ぐに視線を切ってトキロウたちの方に目を向けた。 まずはトキロウやローザの安全と状況を確認したかったからだ。 セラが見ると、トキロウもローザも無事だったが、神父に首根っこを掴まれて吊し上げられているアンソニーの姿が目に飛び込んできた。 

 「アンソニーッ!!」セラが吊し上げられているアンソニーに向かって叫んだ。 しかし首を締められているアンソニーからは何の返事も無い...... 気を失っているのか、それとも既に...... セラの心に不安が過った......

 「世羅子!! 神父様は『鬼化象転の術』にかけられて”鬼”になってしまっている!! 何とか神父様とアンソニーを助けてあげて!! このままだと二人とも死んでしまうよ......」トキロウがセラに向かって叫んだ。 セラなら神父にかけられた術を解けるかもしれないと一縷の望みをかけて......

 「なんて酷いことを...... 『鬼化象転の術』を使うなんて、人の命を何だと思っているの!!」トキロウの言葉を聞いて、セラがカグラを睨んだ。 カグラの非道さに怒りが込み上げてくる。 

 「私に何か文句がありそうな顔だな...... そのような下郎一人死んだところで、どうということはない...... 何より大事なのはどんな手段を用いてでも、目的を果たすことなのだ。 世羅子...... お前を葬るという目的をな...... ふふふふふ......」 セラの怒りを感じ取ったカグラだったが、全く悪びれる様子も見せず、悠然と笑っていた。 神父とアンソニーが死のうと、全く心が痛まないといった態度だった。

 「カグラ......」カグラの人を人とは思わぬ態度にセラの怒りは爆発しそうになったが、今はアンソニーと神父を救うことが最優先だった。 二人ともこのままでは死んでしまう...... 何とかしてアンソニーと神父を助けなければ......

 「ふふふ...... 今ちょうど、その男を手始めに冥土に送るところだ。 そなたへの挨拶がわりに、この男がくびり殺されるところを拝ませてやろう。 神父よ、一思いにその男の首の骨をへし折るのだ!! やれ!!」カグラは神父にアンソニーの首の骨を折るように命じた。

 カグラに命じられると、神父の身体が先ほどよりも肥大化し、筋肉がますます隆起し始めた。 隆起した筋肉には血管が浮かび上がり、全身が燃えているように真っ赤に変色した。 そして、アンソニーを締め上げていた腕がボコっとより一層盛り上がった。 神父はカグラの命令に従い、アンソニーの首の骨を折るつもりだ。

 「神父様、やめてぇぇぇーーーっ!!」神父の腕にしがみ付いていたローザが悲痛な叫びをあげた。 アンソニーの命は風前の灯火だった。

 だが、カグラに命じられた神父が一気に腕に力を込めてアンソニーの首を折ろうとした、その瞬間、セラの瞳が輝き、続いてセラの身体から金色オーラが発せられた。 セラの身体から発せられたオーラは瞬く間に教会全体を包み込んでいく。 

 「何だ、これは?! 金色のオーラだと......? このような能力は見たことが無い...... 世羅子!! これは一体何だっ?!」突如セラから発せられたオーラが教会を包み込んでいくのを見てカグラは驚愕した。 カグラも今までこんな能力は見たことが無かった。  

 「これは、金色のオーラが教会を包み込んでいく......?」ローザもカグラと同じように驚愕していた。 一体セラは何をしたのか?

 セラのオーラが教会全体を包み込む...... そしてセラの発したオーラに目を奪われていたローザが神父とアンソニーの方に目をやると、神父は身体を小刻みに震わせて固まっていた。 神父はまるで金縛りにあったように、全く身体を動かすことが出来ない様子であった。

 「うう......」アンソニーが僅かに呻き声をあげた。 どうやら首を折られたと思われたアンソニーは無事である。 

 「アンソニーはまだ無事だわ!! セラが神父様を止めてくれたのね!!」神父がカグラの命令に従わずに、動きを止めている。 ローザはアンソニーがまだ生きている事にホッと胸を撫で下ろした。 きっとセラが能力で神父を止めてくれたのだと確信した。

 「何をしている!! 早くその男の首を折るのだ!! 私の命令が聞けないのか!!」カグラが自分の命令に従わない神父に向かって再び命令した。 神父が命令に従わなかった事に苛立っている様子だった。

 しかしカグラに命令されても神父は動かない...... いや動こうとしているのだが、動けないのである。 セラの能力で動きを封じられていた。

 「神父様...... アンソニーを離して......」セラが硬直している神父に、アンソニーを離すように言った。 すると神父はセラのいう事に従いアンソニーを離した。 アンソニーの身体が、”ドサっと”床に落ちる。

 ローザは床に落ちたアンソニーの元にすぐに駆け寄った。 「アンソニー、大丈夫?!」ローザは心配そうに聞いた。

 「ゴホゴホ...... ああ...... 何とかね。 もうダメかと思った...... セラが来なかったら危なかったよ......」アンソニーは首を抑えて苦しそうにしながらも笑顔で応えた。 どうやら大丈夫そうである。

 「良かった...... アンソニー......」アンソニーが無事であった事に安心したのか、ローザはアンソニーに抱きついて泣き始めた......

 「世羅子!! 神父様を助けないと!! 早くしないと術の影響で手遅れになる!!」アンソニーが無事で一安心と行きたいところだったが、術をかけられた神父を早く処置しなければ手遅れになる。 トキロウがセラに神父の手当てを急ぐように言った。

 「うん!!」セラは頷いて、急いで神父の元に駆け寄った。 神父は身体を痙攣させていて苦しそうにしている。 目から血の涙を流し、口からは泡を吹いていた。 すでに術の影響で、身体が限界を迎え始めている危険な状態だった。

 セラは神父が危険な状態になっていることを察知したのか、すぐに神父の胸に手を当ててヒーリング能力で治療を開始した。 (心音が弱くなってきてる...... 間に合って!!)神父の心臓の鼓動が弱くなってきている。 神父を助ける為、セラは懸命に力を振り絞った。

 「セラ...... 神父様を助けてあげて...... メスマリア様、神父様をお助けください!!」ローザはメスマリアに祈った。

 「世羅子......」トキロウもセラの元に駆け寄った。 そして心配そうな表情をしながらセラの治療を見守っている。

 ローザとアンソニーも祈る気持ちでセラの治療を見守った。 ローザは瀕死の神父の手を握り、懸命に祈った。 「メスマリア様..... どうか神父様をお助けください!! セラにあなたの力をお貸しください......」神父はきっと助かる。 セラならきっと助けてくれる!! そして神が神父を見捨てるはずは無いと、そう心に強く願いながら......

 カグラは黙ってセラが神父を治療しているのを眺めていた。 (先ほどの世羅子が使った力...... あれは私の『催眠法力』とも違う...... あの力は一体何なのだ? あんな能力が世羅子にあったとは...... 新たな力に目覚めたのか? 油断ならぬ奴よ......)カグラは先ほどセラが使った能力を分析していた。 あんな力がセラにあるとは知らなかった。 カグラの知らない未知の能力...... カグラはセラが今まで自分が知るセラではないことを理解した。

 セラが治療を続けていると神父の心臓の鼓動が徐々に強くなってきた。 そして、隆起していた身体が元に戻り始め、呼吸も安定してきた。 セラは神父の容態が安定したのを見て、神父の額にそっと手を当てた。 すると神父は深い眠りに落ちて、その場に崩れ落ちた。 崩れ落ちた神父の身体をアンソニーとローザが支え、ゆっくりと神父の身体を床に寝かせる。 

 「これで大丈夫......」神父を眠らせたセラがホッと一息ついた。 神父はセラの治療でカグラの呪縛から解放され何とか命を取り留めた。

 「神父様...... 良かった......」セラのおかげで神父が一命を取り留めた事にトキロウ、ローザ、アンソニーの三人はホッと胸を撫で下ろした。

 「ローザ、アンソニー、神父様を安全な場所へ移動させて......」セラが二人に神父を安全な場所に運ぶように頼んだ。 

 「わかったわ」ローザとアンソニーの二人は神父を担ぎあげ、教会の奥にある神父の部屋へと連れて行くことにした。 二人で神父を担ぎ上げて、部屋へ連れて行こうとすると、ローザは突然動きを止めた。 そしてセラの方を振り返る...... 振り返ったローザの表情は、どこか不安げだった。

 「どうしたんだい、ローザ? 何か気がかりでもあるのかい?」突然セラの方に振り返り不安そうな表情を浮かべるローザを見て、アンソニーは気になった。

 「アンソニー....... ちょっと待ってて......」ローザはアンソニーに神父を任せ、セラの元へと駆け寄りセラに抱きついた。 

 「ローザ...... どうしたの、いきなり......?」いきなり抱きついてきたローザに、セラはきょとんとしていた。 

 「セラ...... 気をつけて...... 決して死んではダメ...... あなたは多くの人の希望なんだから、必ず生きるのよ!!」抱きついたローザがセラに呟いた。 ローザはセラが心配でならなかった。 これから始まるであろう、カグラとの戦い...... カグラの恐ろしさと、強さを身を以て知ったローザは不安で仕方が無かった。 セラの勝利を信じてはいるが、相手は並大抵では無い。 いくらセラでも、勝てないのではないかという不安が頭を過ぎる。 やっと分かり合えて、妹のように思えてきたセラと、もう会えなくなるのでは無いか...... ローザは不安で不安で仕方がなかった......

 「私は大丈夫よ。 そんなに心配しないで...... 早く神父様を連れて行ってあげて...... ローザ姉さん......」驚いたことにセラがローザを”姉”と呼んだ。 ローザの気持ちを読み取ったのだ。 自分を心配してくれているローザの心がセラの心の中に流れてくる。 ローザが誰よりも心優しい人間であることは、最初に会った時からわかっていた。 ローザが自分を妹のように思ってくれていることも知っている。 そしてセラ自身もローザを姉のように思っていた。 セラは優しいローザを巻き込みたくなかったから、あえてローザに冷たく当たっていた。 しかしローザと共に生活をしているうちに、ローザの優しさがセラの気持ちを解きほぐしていったのだ。 

 「セラ......」自分を姉と呼んでくれたセラ...... ローザは感激のあまり涙が溢れ出てきた。 そしてセラを強く抱きしめる...... セラもローザを強く抱きしめた。 ローザの優しさが、セラの心に染み渡る...... 二人はこの瞬間、本当の姉妹になったのだ。

 「ローザ...... 早く神父様を......」しばし抱き合っていた二人だが、感傷に浸っている時間は無かった。 ローザは名残惜しそうにしながらセラから離れると、アンソンーと共に神父を担いで、奥の部屋へと向かった。 

 途中、何度も振り向くローザを安心させるかのように、セラは笑顔を浮かべながら、二人を見送った...... 二人が奥に入っていくのを見送ると、セラはトキロウの方を見た。「時郎、怪我は無い?」セラが心配そうな表情を浮かべながらトキロウに聞いた。 

 「僕は大丈夫だよ。 ローザさんや、アンソンーさんが僕を守ってくれたから......」トキロウは笑顔で応えた。 

 「そう...... 良かった......」トキロウが無事である事を確認して、セラは安心した表情を浮かべた。 

 「世羅子は大丈夫かい? 君も大変だったんだろ......」今度はトキロウがセラに聞いた。

 「私は大丈夫よ......」

 「そっか...... 君の身に何かあったんじゃ無いかと心配したけど、無事で良かった......」トキロウが優しい笑顔を見せると、セラがトキロウを抱きしめた。 

 「せ、、、世羅子......?」セラが突然抱きついてきたので、トキロウは戸惑ってしまった。 珍しくセラが感傷的になっている。

 抱きついたセラは僅かだが震えていた...... これから戦う事になるカグラへの恐怖なのか? それともカグラへの怒りなのか? または別の何かなのか? それともそれが全て合わさったものなのか? トキロウにはわからなかったが、震えるセラをトキロウは優しく抱きしめた。

 「トキロウ...... カグラと戦うわ......」セラが呟いた。

 「うん......」

 「どうなるかはわからない...... でも、私はカグラを許せない......」

 「うん...... わかってる。 世羅子、一つ約束して......」

 「約束......?」

 「うん。 必ず母さんをやっつけて!! あの傲慢な鼻っ柱をへし折ってやってくれ!!」

 「わかった。 約束は守るわ!! 必ずカグラをやっつける!!」

 「頑張ってね...... 世羅子......」

 「うん......」セラは小さく頷いた。

 お互いの気持ちを確かめ合うと、セラとトキロウはお互いを強く抱きしめ合った。 そしてセラは自分の額をトキロウに額に当てて、トキロウを見つめた。 トキロウもセラと同じようにセラを見つめた。 見つめ合う二人は楽しそうに微笑んでいた...... 

 セラとカグラ....... この二人は戦う宿命にある。 二人の戦いを止めることは誰にも出来ないのだ。 トキロウは二人が戦う運命にあることが、何よりも悲しかった。 カグラは母であり、セラは自分の命を救ってくれた恩人だ。 その二人がなぜ戦わなければならないのか? 戦いを止める方法があるのなら、どんな方法でも良いから、誰か教えて欲しいと思った。 二人の戦いを止める事ができない、自分の不甲斐なさを痛感した。 トキロウに出来ることは、セラの勝利を信じて見守ることだった。 そしてセラがもしカグラに敗れたならば、自分も死のうと覚悟を決めていた。

 セラは突き合わせた額から、自分がいない間に、この教会であった出来事をトキロウの思考から読み取った。 カグラが息子であるトキロウを手にかけようとした事。 ローザがトキロウを守る為にカグラと戦い、力を覚醒させたこと。 そしてカグラの非道の数々...... 全てをセラは知った。 そしてトキロウの悲痛な覚悟を...... トキロウの為にも何としても勝たなければならない。 二人の未来の為にも、決して負けられない戦いに挑む決意を固めた。 

 そして二人は少しの間、額を合わせながら見つめ合った後、二人はゆっくりと離れた。

 「時郎...... あなたの願いを叶えてあげる......」

 「え......?」トキロウは一体何のことだかわからず戸惑った。 

 すると戸惑うトキロウの唇に、セラがそっと口づけをした。 「せ、、、世羅子......」突然のセラのキスにトキロウは仰天した。 確かに以前、トキロウがセラにキスをねだったことがあった。 あの時ははぐらかされたが、セラはその願いを叶えてくれた。

 セラの唇はトキロウが想像していた以上に柔らかかった。 心の中がとろけてしまうような感触...... トキロウにとってもセラにとっても、初めての口づけだった。 しかし初めての口づけはどこか儚げな感触を感じさせた......

 そして口づけを終えると、「行ってくるわね......」そう言ってセラがフワリとトキロウから離れていく...... トキロウは心の中で(離れないで......)そう強く思った。 このままセラが消えてしまうのではないかと思ったからだ。 

 「世羅子!!」離れていくセラをトキロウは呼び止めた。 

 トキロウに呼び止められたセラは、優しい眼差しでトキロウを見た。 

 「気をつけてね......」それが今のトキロウにとって、セラに贈る事ができる精一杯の言葉だった...... 

 「うん......」セラは微笑みながら頷いた。 そしてカグラの方へと向かっていく。 トキロウはセラの後ろ姿を目に焼き付けるようにしながら、ジッとセラを見つめていた。

 「今生の別れはすんだか、世羅子......? 揃いも揃ってくだらぬ感傷に浸りおって。 この私は待たせるとはいい度胸だな......」自分の元へとやってくるセラにカグラが言った。 セラ達の行動をカグラはひややかな目で見ていた。 くだらない感傷に浸っているセラ達を愚かだとすら思っていた。

 侮蔑の言葉を吐くカグラを、セラはジッと見据えていた...... その眼差しは、どこか寂しさを感じさせていた。 カグラを哀れんでいるようにも感じる...... そしてセラは両手の掌をギュッと握り締めた。 握り締めた手がワナワナと震え、何かを堪えるようにセラはギュッと唇を硬く結んでいる。 

 さらにセラの全身が震え始めた。 そしてセラが目を見開いた瞬間、「カグラァァァァァァァーーーーーーーーーーーツ!!」セラが大きな声で吠えた。 今まで押さえ込んでいたカグラへの怒りを爆発させるかのようにセラは吠えた。 カグラに向ける視線は怒りに満ちており、怒りで全身を震わせていたのだった。 カグラの数々の非道な行為に、セラはもう我慢ならなかった。 この人間だけは許しておけない!! 

 トキロウはセラが吠えたのを見て驚いた。 ここまでセラが感情を爆発させるところを見たことがなかったからだ。 セラが本気で怒っている。 セラの怒りの凄まじさをトキロウは肌で感じ取った。 

 一方のカグラは悠然と構えていた。 セラの自分に対する凄まじい怒りを受けても、全く動じている様子はなかった。 ただただ冷たい目でセラをジッと凝視していた。 しかし、わずかだが口元が笑っているようにも見える......

 「ふふふ...... この私を呼び捨てにするとは、しばらく合わぬ間に、随分と偉くなったものよな...... 世羅子......」カグラの目がスウっと細くなった。 

 「カグラ!! 町の人たちを操り、己の配下の『白眠衆』を捨て駒にし、神父様に命の危険がある残忍な術をかけて私の大切な友人を傷つけさせ、そして自分の息子である時郎さえ手にかけようとした、お前の非道の数々を私は絶対に許せない!!」

 「ふっ...... 青二才の小娘が生意気なことを...... 許さぬのは私の方だ!! 時郎を誑かし、『姫美島』の家を乗っ取ろうとした、そなたの所業は万死に値する!! 神をも恐れぬそなたの大罪に、私自ら天罰を下してやろう!! 覚悟するが良い、世羅子!!」

 「世羅子は僕を誑かしてなんかいない!! それは母さんの誤解だ!! このわからずや!!」我慢堪らずトキロウが吠えた。

 「黙れ時郎!! 世羅子に誑かされ、『姫美島』の家を危機に追いやったそなたも世羅子と同罪!! そなたの身勝手で、どれだけ私が恥をかいたと思っておる!! これ以上世羅子を庇い立てするのであれば、そなたも世羅子同様、私が天罰を下してやろう!!」

 「どっちが身勝手だ!! 何の罪もない人を巻き込んで、平気で人を傷つける人間のくせに偉そうに言うな!! お前なんか母親じゃない!! 世羅子が一体、何をしたって言うんだ!! 神様気取りもいい加減にしろ!!」トキロウも負けじと言い返す。 カグラの身勝手な言い草に怒りが治らない様子だった。

 怒りが治らないトキロウにセラがスッと手を出してトキロウを制した。「時郎...... ありがとう。 私を庇ってくれて...... 私は大丈夫だから心配しないで。 この人間には何を言っても無駄...... 自分を神だと思っている、ただの傲慢で勘違いしている人でなしなんだから...... 自分が神なんかじゃないということを私が思い知らせてやるわ!! あなたの悔しさを私が晴らしてあげる......」セラがトキロウを宥めるように言った。 

 「世羅子......」

 「ほう...... 大きく出たものだな。 この私に思い知らせるだと? 勘違いも甚だしいわ!! この私に挑もうなどという、命知らずの代償は高くつくことになるぞ...... 身の程知らずめが!!」

 「ならやってみるといいわ!! 私は絶対にお前に負けない!! お前に苦しめられた多くの人々の無念を今ここで晴らしてやるわ!! カグラ!! 私がお前を倒す!!」

 「いい度胸だ!! この私に挑もうというそなたの心意気、見事だと褒めてやろう...... ならばその心意気に応え、一切の容赦も手加減もせぬ。 この『姫美島』家 ”第九十九代 当主” 『天眠大神 姫美島 迦虞羅』が全力で、そなたの挑戦を受けて立ってやろう!! かかってくるがよい!! 『藤堂 世羅子』よ!!」

 ついにセラと宿敵カグラの戦いが始まった!!





「催眠聖女 ローザ・フェアリー」(21)終





(22)へ続く






   










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