『催眠聖女 ローザ・フェアリー』(22)

 遂に『奇跡を起こす力を持つ少女 セラ』と、『天眠大神 姫美島 迦虞羅』による宿命の戦いが始まった。 

 「母さんが名乗りをあげた!! 本気だ...... 本当に全力で世羅子と戦うつもりなんだ...... あの母さんが......」トキロウは、母カグラが名乗りをあげたことに驚いていた。 超常的な力を持つカグラは、どんな時も他人を見下し、傲岸不遜な態度で戦ってきた。 誰が相手であろうと、悠然と立ち振る舞い、圧倒的な力で叩き潰してきた。 そのカグラが名乗りをあげたのだ。 それはカグラがセラの力を認め、本気で戦うという意志の表れだった。 今まで、本気の母カグラをトキロウはみたことがなかった。 母カグラの本気の力とは、一体どれほどのものなのか? トキロウの身体に冷たい汗が流れた。

 カグラは名乗り終えると、着ていた羽織をバサっと脱いだ。 そしてセラを見据える。 カグラのセラを見据える目は真剣そのものだった。 先ほどまで見せていた、他人を見下すような目は全く見受けられない。

 セラもカグラと同じように、ジッとカグラを見据えていた。 そしてカグラが本気で自分と戦うつもりであることを感じ取っていた。 あの傲慢なカグラが本気になっている。 セラにとってそれは決して都合がいいことでは無かった。 だが、本気のカグラを倒さなければ、自分にもトキロウにも未来は無い。 ここでカグラを倒さず、逃げて回れば、カグラは執拗に追いかけてきて、その度に何の罪も無い人間が巻き添えを食うことになる。 それが今回の件で身に染みた。 これ以上、自分たちの為に犠牲者を増やすわけにはいかない。 手段を選ばない冷酷非情なカグラを今ここで倒しておかなければならないのだ。

 「行くぞ!! 世羅子!!」カグラが目を見開き、凄まじい眼力をセラに浴びせてきた。 そのカグラの眼力を浴びた者は、、皆怯え、怯み、戦意を失って、瞬く間にカグラの催眠に堕ちてしまうほどに強力な眼力である。 大抵の相手なら、この眼力だけで十分だった。

 カグラの強力な眼力を浴びたセラだが、セラも目を見開いて、カグラの眼力を受け止めた。 セラも負けてはいない。 セラも気迫の篭った目で、カグラを睨み返している。 凄まじいセラとカグラの睨み合いによって、教会の聖堂は異様な雰囲気に包まれた。

 ローザとアンソニーが、神父を教会の奥の部屋に運び終えて、聖堂へと戻ってきた。 ローザは聖堂に戻った瞬間、異様な雰囲気を感じ取った。 そしてローザの目に、セラとカグラが互いに睨み合っている様子が目に飛び込んできた。

 「トキロウさん...... 二人は......?」ローザがトキロウに状況を聞いた。

 「二人とも睨み合ったまま、ずっと動きません。 おそらくお互いの催眠力を、この睨み合いで推し量っているのだと思います。 あの母さんと互角に睨みあえる人間は初めて見ました。 世羅子も負けていません......」時郎がローザに状況を説明した。

 「凄い睨み合いね...... こちらの息がつまりそうだわ。 セラは良く、あのカグラと真っ向から対峙しているわ...... やっぱりセラは凄い子だわ!!」ローザはカグラと互角に睨み合っているセラに驚いた。 カグラと対峙したローザは、身を以てカグラの力の凄まじさを知った。 正面から向かいあうだけで、押し潰されそうなほどの圧迫感と全身が総毛立つほどの恐怖を感じた。 ローザは折れそうな心を懸命に奮い立たせ、勇気を振り絞りながら、なんとか立ち向かったが、結局はカグラの持つ力に圧倒された。 しかしセラは全く怯んでいる様子が無い。 怯むどころか、カグラのプレッシャーを追い返そうという気迫がセラから感じられる。

 「この睨み合いで、押し負けたら一気にやられるでしょう。 怯んだり、恐れたりしたら、瞬く間に母さんの催眠法力の餌食になります。 世羅子もそれは良くわかっている筈です」

 「セラ...... 負けないで......」ローザは心の中でセラの勝利を祈った。

 (世羅子...... この私の眼力を真っ向から受け止めるとは、大した奴よ。 私に挑むだけの事はある。 侮れぬな......)カグラは、自らの眼力を真っ向から受け止めているセラに内心驚いていた。 自分の眼力とここまで渡り合えた人間は今までいなかった。 これだけで、世羅子の力が並々ならぬものだとわかる。 

 (カグラ...... 凄い迫力と、なんて強力な眼力なの...... 気を抜いたら一気にやられる。 『天眠大神』の二つ名は伊達じゃ無い......)セラはカグラの凄まじい眼力を受けて、改めてカグラの力を見直した。 傲慢で傲岸不遜な態度も、自らの力に絶対的な自信があるからこそなのだと思った。 やはりカグラは桁外れの力を持っている。 

 セラとカグラはお互いの力量を認め合いながら睨み合いを続けた。 トキロウたちは二人の激しい睨み合いの応酬を固唾を飲んで見守っていた。 どちらが先に仕掛けるのか? どちらが戦いの主導権を握るのか? 二人の互角の睨み合いからは、戦いの行方を予想するのは困難であった。

 (このまま睨み合いを続けていてもラチがあかぬ。 世羅子の力は未知数なだけに、様子を伺っているのは得策では無い。 私から先に仕掛けて、世羅子の能力を見極めておかねば、万が一ということもある...... まずは私が主導権を握る!!)カグラが膠着状態の睨み合いを打開する為、自ら先手を取る事した。 セラの能力は未知数である為、何をしてくるかわからない。 先に仕掛け、セラの能力を見極めておく事は、これからの戦いに於いて重要な要素になる。 

 (カグラの雰囲気が変わった...... 仕掛けてくるつもりね)セラはカグラの雰囲気が変化したのを感じ取り、カグラから先に仕掛けてくることを察知した。 カグラから発せられる念が攻撃的になったからだ。 セラはどんな攻撃がきても大丈夫なように精神を集中させた。 カグラ相手には一瞬の油断が命取りになる。 

 「トキロウさん...... 二人の雰囲気が変わったわ......」ローザもセラとカグラの雰囲気が変わったことを察知した。 先ほどまでの睨み合いとは違う、緊張感が漂っていた。

 「ローザさんも気づきましたか!! おそらく先に母さんが仕掛ける筈です。 母さんの性格なら、いつまでも様子を見ていることなんて無いでしょうから....... 先に先手を取るつもりです」トキロウは冷静に二人の状態を分析していた。

 「セラもそれをわかっているのかしら......? セラは人の心が読める能力があるから、カグラがどんな術を使うか、予め知ることができるでしょう? その能力があればセラが有利になるのではないかしら.......」

 「確かに世羅子は人の心を読める能力がありますが、それほど万能では無いそうです。 相手に触れたり近づいたりすると、よりはっきりと読み取れるそうですが、相手が離れていたり、心を閉ざしていたり、こういた緊張状態の時は、心を読むことが難しくなると言ってました」

 「それじゃ、セラは今はその能力があまり使えない可能性があるのね......」

 「ただ、ある程度は読めるかと思います。 僕らでさえ、母さんの雰囲気が変わったのを感じ取れたのですから、世羅子は間違いなく感じ取っている筈です。 それに世羅子は頭が良いから、能力を使わなくても相手の手の内を読めると思います」

 「そうね。 セラは賢いから、能力が使えなくても相手の手の内を読めるでしょうから......」

 「勝敗を決めるのは二人の能力の違いだと思います。 世羅子は催眠法力が使えませんが、母さんとは違う能力があります。 それに世羅子の能力を母さんは全て把握していません。 その辺が世羅子にとって有利になると思います。 ですが、母さんの『神催眠の法』は多種多様な術があるので、引き出しの数が世羅子とは段違いですし、催眠法力の総量も桁外れです。 それに世羅子は『神催眠の法』を学んでいないので、母さんの術にどう対応していくかが、勝敗の鍵だと思います」

 「セラは『神催眠の法』が使えないの?」

 「はい。『神催眠の法』は『姫美島』本家の人間しか学ぶことが許されていません。 世羅子は分家の人間なので学んでいないんです。 ただ、僕は知識だけはある程度あったので、僕が知っている範囲で、世羅子に『神催眠の法』を教えた事はあります。 いつか母さんと戦う時がきた時の為に、世羅子に教えておきました」

 「それなら、ある程度はセラも対応できるわね?」

 「ある程度ならです...... 僕も知らない術が数多くありますし、秘伝の術もあります。 母さんもその辺りはわかっているでしょう...... 世羅子が催眠法力を使えれば、戦いは有利になると思うのですが......」

 ローザはトキロウの分析を聞いて、トキロウが的確かつ冷静に戦況を分析している事に驚いた。 先ほどのカグラとの戦いでも、トキロウのアドバイスがなければカグラにやられていただろう。 やはりトキロウも『姫美島』の直系の血を引いているだけあり、素養の高さが伺えた。

 睨み合う二人の顔に汗が滲んでいる...... ただ睨み合っているだけでも、相当量の体力と精神力を消耗しているのだ。 睨み合いはすでに数十分にも及んでいた。 

 「むん!!」そして気合と共にカグラが遂に動いた。 睨み合いの膠着状態を打ち破り、カグラが念を込め始めた。 カグラの念仏が聖堂に響き渡る。 カグラが先制攻撃に出た。

 「やはりトキロウさんの読み通り、カグラが先に動いたわ!! 一体、どんな術を使うつもりかしら?!」

 「あれは...... 母さんはよほど世羅子の能力を警戒しているんだな...... 世羅子の能力を見極めるつもりか?」トキロウはカグラの念仏を聞いて、カグラの意図に気づいた。 

 セラは念仏を唱えるカグラを、身構えながらジッと凝視している。 カグラの挙動一つ一つを決して見逃さないようにしていた。 (カグラ...... やはり先に動いた。 どんな術にでも対応できるように、力を溜めておかなければ......)セラは攻撃に備え、身体の中に力を溜め込んだ。

 念仏を唱えているカグラの身体から黒い霧が噴出した。 「あの黒い霧は?!」ローザがカグラから発せられた黒い霧を見て思わず声をあげた。 その霧は先ほどのローザとの戦いの時と同じものだった。 だがローザの時とは量が全く違う。 ローザの時の数倍の量がカグラの身体から発せられていた。 そしてその黒い霧は、巨大な人型になった。 それはローザを苦しめた黒い巨人だった。 カグラから発せられた黒い霧が巨人の姿になった。 だが巨人は一体では無い。 なんと五体の黒い巨人が出現した。

 五体の黒い巨人がセラの前に立ちはだかった。 凄まじい迫力である。 

 「黒い巨人が五体も...... 一体でさえ、あれだけ苦戦したのに、それが五体も現れるなんて...... トキロウさん......」ローザは五体の黒い巨人を見て、絶望感を感じていた。 一体でさえローザは苦戦し、指輪の力を借りて、なんとか消滅させることが出来た。 しかしそれが五体も出現したのだ。 その脅威は想像しただけで絶望を感じる...... ローザは絶望的な目でトキロウを見た。

 だが、絶望感を滲ませるローザとは裏腹にトキロウはあまり驚いていない様子だった。 同じようにセラも顔色一つ変えていない。 なぜ二人はこれほど落ち着いているのか? 目の前の黒い巨人に全く脅威に感じていないのか? 

 黒い巨人の一体が、セラに向かって大きな拳で殴りつけてきた。 しかしセラは全く微動だにしない。 避けるわけでもなく、ただジッとしている。

 「セラ、危ない!!」ローザが動かないセラに向かって叫んだ。 

 セラは黒い巨人の拳が当たる瞬間、スッと右手を上げた。 すると巨人の拳がセラの右手の前でピタリと止まった。 驚いた事にセラは片手で黒い巨人の拳をいとも簡単に止めてしまった。 

 「はっ!!」黒い巨人の拳を止めたセラが気合を込めると、セラの身体から金色のオーラが吹き出し、吹き出したオーラが黒い巨人を吹き飛ばすように一瞬で消滅させた。 

 黒い巨人が消滅すると、他の四体の黒い巨人がセラに一斉に襲い掛かった。 巨人が襲い掛かった瞬間、セラは再び気合を込めると、再び金色のオーラがセラの身体から激しく吹き出し、四体の黒い巨人をまとめて吹き飛ばし消滅させた。

 「凄い!! 五体の黒い巨人を一瞬で消滅させるなんて......」黒い巨人を簡単に消滅させたセラに、ローザは驚愕した。 セラの能力は、やはり自分とは次元が違う...... セラが落ち着き払っていたのも、黒い巨人など相手にならないと思っていたからだったのだ。

 「ふふふ...... やはりこの程度では小手調べにもならぬか......」黒い巨人消滅させられたカグラだったが、意外にも余裕の表情を浮かべていた。 セラがこの程度の術では倒せないことは百も承知と言った様子だった。

 「どういうこと......? カグラは全然意に介していないみたい。 セラが巨人を消滅させた事を当然といった感じに見えるわ......」ローザは、カグラが余裕の表情を浮かべている事に疑問を感じた。 プライドの高いカグラなら、自分の術が簡単に破られた事にもっと感情的なってもおかしく無いと思っていたからだ。

 「母さんは、世羅子の能力を見極める為に、黒い巨人が世羅子に通用しない事をわかっていてあえて術を使ったんです。 僕も母さんが殊の外、慎重になっている事に驚きました。 母さんは世羅子を侮ったり、見縊ったりは全くしていません。 冷静に世羅子の能力を分析して戦おうとしています。 悔しいですが、さすが母さんといったところです。 世羅子とは経験の差が違う......」トキロウが悔しそうに唇を噛み締めた。

 「経験の差......?」

 「世羅子は催眠の戦いをした経験がありません。 一方、母さんは百戦錬磨です。 この経験の差が世羅子と母さんの最も大きな違いです。 母さんが感情的になってくれれば、その隙をつくことも出来ますが、冷静に対処されると、引き出しの少ない世羅子は不利になります」

 「じゃあ、セラは今まで戦いを経験したことは無いのね......?」

 「残念ながらありません...... それに母さんは何か世羅子と戦える事を喜んでいるようにさえ感じます...... あんな母さんは見たことがありません......」

 「カグラが喜んでる......?」ローザはトキロウの言っている意味がわからなかった。

 ”カグラが喜んでいる” このトキロウの推察は当たっていた。 カグラは今まで感じたことの無い高揚感を感じていた。 セラの怒りが頂点に達し、自分に挑んでくる気迫と覚悟を見たときには全身が震えた。 それは恐れからの震えではなく、武者震いだった。

 カグラはこれまで圧倒的な力で、己に敵対するものや、逆らうものを叩き潰してきた。 そんな圧倒的な強さのカグラを誰もが恐れ、やがてカグラに挑むものはいなくなった。 神の化身である自分に勝てるものなど存在しない。 誰もが自らの力の前に平伏すと思っていた。 

 だが、心の奥底では物足りなさを感じていたのも事実だった。 自分と互角に戦える存在もいなければ、挑んで来るものもいない...... だが今ここに、自分に戦いを挑むものが現れた。 先ほどセラが見せた力を目の当たりにした時、カグラは驚きと同時に期待で心が震えた。

 やっと自分と互角に戦える存在が目の前に現れた。 そしてその人物は自分に対して、並々ならぬ怒りを抱いている。 命をかけて自分に挑んで来るのだ。 (世羅子...... 大したものよ。 あれだけ憎々しく思っていたそなたの存在だが、今はそなたの存在に感謝している。 この私が全力で戦える相手がようやく現れた。 そなたの成長嬉しく思うぞ。 ふふふふふ......)カグラは心の中で、セラの存在を認めセラと戦えることを喜んでいた。

 『姫美島』本家を脅かす存在であり、憎くて憎くて仕方が無かったセラの存在...... 今でもその感情は消えてはいないが、同時にその存在に感謝する矛盾の感情をカグラは感じていた。 カグラはそんな相反し、矛盾する感情を抱く己の心がおかしくて堪らなかった。 

 (そなたと戦う事は、あの時に宿命付けられたのであろうな......)カグラはセラと戦う宿命を決定付けられた時のことを思い返していた。 それはまだ、セラが生まれる前であり、カグラが『姫美島』の当主になる前の記憶だった。

 カグラは生まれた時から超常的な力を有し、『天眠大神の化身』と言われ、その力と存在感は長い『姫美島』家の中でも群を抜いており、初代当主『姫美島 迦虞耶』に匹敵する程であった。 カグラの誕生は『姫美島』家の復活を期待させた。

 『姫美島』直系の子孫は特別な力を持って生まれることが多いが、その力も血が薄れていくことにより失われつつあった。 そんな衰退していく『姫美島』家にとって、カグラは『姫美島』家再興の希望だった。

 大きな期待を背負って生まれてきたカグラであったが、カグラには一つ致命的ともいえる問題があった。 それは、カグラが人の心を持って生まれてこなかった事であった。 カグラには人が持っている、優しさ、思いやり、慈悲の心などの感情が皆無だった。 

 人の苦しみや痛みはわからない。 自分より能力の劣るものは全て見下していた。 人も心が無い上に、さらに超常的な力を持つカグラを、周りの人間は恐れてカグラの顔色ばかりを伺っており、カグラはそんな顔色ばかり伺う分家の人間達を何よりも嫌悪していた。 

 そんな環境で育ったカグラは『自分は特別な存在』である思っていた。 カグラの心の中にあったのは、自分は特別であり、神の化身であるという傲慢とも思える強い自尊心だった。 そして『姫美島』の再興と繁栄のみがカグラの生き甲斐となっていた。

 分家の人間達も表向きはカグラに従っているが、内心はカグラを忌み嫌っている事は知っていた。 『天眠大神の化身』と称され、『姫美島』家の後継者として生まれたが、誰も自分を信頼も尊敬もしていない...... 友人と呼べる人間さえいなかった。 家族は母親の『姫美島 日魅子』のみであり、父親は大戦で戦死した。 信頼できる人間は一人もいなかったが、カグラは寂しいとは思わなかった。 力さえあれば誰もが自分に従うのだ。 だったら力で従わせれば良い。 信頼など必要ない。 友も仲間もいらない。 

 カグラは問題を起こしたり、自分に従わない分家を容赦無く叩き潰した。 力で分家を押さえ込むのが一番良い方法だと考えていたからだ。 だが皮肉な事に、このカグラの仕打ちが分家と本家の確執を大きくしていった。 カグラの苛烈な仕打ちが原因で、分家同士がまとまり始めたのだ。 

 今までカグラのやり方に不満を持ちながらも、カグラの力を恐れて従っていた分家達がカグラに対して反目してきたのだ。 分家達はカグラに従わず、御三家の一つで、分家の中で唯一正当な『姫美島』の血統を守っている『藤堂』家を担ぎ上げてきたのだ。 藤堂の当主であった『藤堂 優羅子』は力ではカグラに及ばないものの、人格、品性、人望に優れ、分家からの信頼が厚かった。

 多くの分家から担ぎ上げられた優羅子であったが、本家との確執を望んではいなかった。 優羅子はカグラの幼なじみであり、カグラの育った境遇をよく知っていただけに、カグラに対して同情的だったからだ。 しかしカグラはそんな優羅子が何より目障りだった。 自分よりも人望があり、分家から絶大な信頼がある優羅子が疎ましかった。 優羅子がいつか自分を追い落として、『姫美島』本家を乗っ取るつもりだと疑っていた。

 そしてその猜疑心はやがて優羅子を『姫美島』本家や自分を脅かし、排除すべき存在であるとカグラに認識させた。

 そんなカグラの負の感情が『姫美島』本家を揺るがす大事件へと発展していくのであった......





「催眠聖女 ローザ・フェアリー」(22)終





(23)へ続く




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