『催眠聖女 ローザ・フェアリー』(26)

 カグラの生み出した『神眠獣』が猛然と巨狼に襲いかかる。 巨狼の身体は『神眠竜』の身体の表面にある棘状の鱗によって削られ、大きく傷ついていた。 巨狼の身体は激しく出血していた。

 セラは傷ついた巨狼の身体を一刻も早く治療しなければならなかったが、カグラの執拗な催眠攻撃を受けて治療することがままならなかった。 このままでは巨狼は『神眠竜』にやられてしまう。 なんとかこの状況を打破しなければならなかったが、今は打つ手がない......

 『神眠竜』の度重なる攻撃を受けて、巨狼はボロボロの状態だった。 噛み付いて攻撃しようにも、棘状の鱗で守られている『神眠竜』に噛み付くことが出来ない。 巨狼には攻撃手段が無かった。

 「ふふふ...... そなたも狼ももはや風前の灯火...... まとめて始末してやろう。 『神眠竜』よ、狼に止めを刺すのだ!!」カグラが『神眠竜』に止めを刺すように命じた。

 カグラに命令された『神眠竜』は、口の中に炎を溜め込んだ。 巨狼を炎で焼き尽くすつもりであった。 

 「逃げて!!」セラが巨狼に逃げるように言った。 このままでは『神眠竜』の炎に焼かれてしまう。 だが巨狼は逃げるどころか立ち向かう素振りを見せた。 そして立ち向かう態勢を整えた狼はセラの方に顔を向けた。 セラは巨狼の顔を見て何かを感じ取ったのか思わず叫んだ!! 「駄目よ!!」セラは必死で叫んだ。

 セラが叫んだ瞬間、巨狼は『神眠竜』に向かって飛びかかっていた。 巨狼が飛びかかってきたのを見て『神眠竜』が巨狼に向かって激しく炎を吐いた。 巨狼の身体は瞬く間に『神眠竜』の吐いた炎に全身が包まれた。

 「ふははは!! 追い詰められ破れかぶれで突っ込んでくるとは、所詮は獣の浅知恵よな...... そのまま炎に焼かれて黒焦げになるがいい。 世羅子、お前の可愛いペットももはやこれまで!! そなたもすぐに狼の後を追わせてやろう!!」カグラは無謀な攻撃に出た巨狼を嘲笑った。 

 セラは全身炎に包まれた巨狼の姿を唇を噛み締めるようにしてジッと見ていた。 セラは何かの感情をグッと堪えてるように感じる。

 すると炎に包まれた巨狼が動き出した。 そして身体が炎に包まれた状態のまま、凄まじい勢いで『神眠竜』の首元に噛み付いた。 

 「なにっ?! まだ生きておったか!! しぶとい獣め!! だが所詮は無駄なこと。 棘の鱗に覆われた『神眠竜』に噛み付いたところで、自分が傷つくだけ...... 最後にやけくそになって攻撃しているだけよ。 長くは持つまい......」

 巨狼に噛みつかれた『神眠竜』は長い身体で巨狼に巻きついて締め上げた。 鱗の棘が巨狼の身体に食い込んでいく...... だが、巨狼は首元に食らい付いた牙を離さない。

 ギリギリと身体を締め上げられ、鱗の棘が深く肉に突き刺さっていく...... 巨狼の身体から夥しい血が流れ出していた。 

 セラは黙って見ていた...... 炎で身体を焼かれ、棘の鱗が身体に突き刺さり夥しい血を流しながらも、食らい付いて離さない巨狼の姿をセラはジッと見つめていた。 セラは動かない......

 「ふ...... なにもしないとは、可愛いペットを見捨てたのか? そなたを助けにきた狼を見捨てるとは薄情な奴よ...... ふははははは!!」カグラは巨狼の危機に動かないセラを見て嘲笑った。 

 だが、嘲笑うカグラを見てもセラは動かずジッと耐え忍んでいた。 セラがなにもしないのには理由があった。 巨狼は攻撃に出る前にセラにある想いを伝えた。 それは『神眠竜』との戦いは全て自分に任せ、手を出すなという事だった。 動物と意思の疎通が出来るセラはその巨狼の想いを汲み取った。

 群れのリーダーである巨狼は、今まで群を守る為に如何なる強敵であろうと立ち向かってきた。 群れのリーダーとして、それを何よりの誇りにしてきた。 その自らの誇りにかけて、この『神眠竜』は自分が倒す。 どんなに傷つこうと、窮地に追い込まれようと、身体を焼かれようと、手助けされる事は巨狼の誇りが許さない。 

 巨狼の想いを汲み取ったセラは、手助けをしたいという気持ちを断腸の思いで諦めた。 もしセラが手助けをして巨狼が『神眠竜』を倒しても、巨狼はセラを決して許さないであろう。 たとえ死んでも誇りだけは守り通す。 その気高き巨狼の姿を、セラは助けたいという気持ちを堪えながら、しっかりと目に焼き付ける事にした。 

 巨狼が必死に食らい付いていると、『神眠竜』の様子が徐々に変化してきた。 巨狼を締め上げていた力が徐々に弱まっていく...... 

 「どうした?! さっさと締め殺してしまえ!!」カグラが弱まってきている『神眠竜』に向かって激を飛ばしたが、『神眠竜』から反応がない...... 

 『神眠竜』が弱まってきているのを感じ取り、勝機が見えた巨狼は最後の力を振り絞り懸命に牙を食い込ませた。 しかし巨狼ももはや限界が近づいている。 

 「頑張って!!」セラも拳をギュッと握り締めながら心の中で祈った。 巨狼と『神眠竜』の勝負の行方を見守っている。

 そして遂に巨狼の身体に巻きついていた『神眠竜』の身体が巨狼から離れた。 そして身体が解放された巨狼は渾身の力で牙を食い込ませると、『神眠竜』の首は千切れ飛んだ。 千切れ飛んだ『神眠竜』の首が床に転がっていく...... 頭を失った胴体は力を失い、そのまま床へと力無く落ちていった。

 「なんだと?! 私の『神眠竜』が、獣ごときにやられただと!!」巨狼に首を噛み切られた『神眠竜』の無残な姿を見て、カグラは信じられないといった様子で我が目を疑った。 

 首と胴体が別れた『神眠竜』は、ゆっくりと消えて行く...... カグラは消えていく『神眠竜』の姿を、どこか哀れむような哀愁漂う目で見ていた。 そして『神眠竜』は完全にその姿を消してしまった......

 『神眠竜』を真っ二つに噛み千切って勝利した巨狼は、勝ち誇るように大きく吠えた。 そして力尽きるようにそのまま床へと倒れ込んだ。 巨狼は床に倒れ込むと、大きくなった身体は徐々に小さくなり、元の狼の姿に戻った。

 セラはすぐに倒れた狼の元に行き、ヒーリング能力で手当てをしたかったが、まだカグラとの戦いが終わってはいない。 ここで狼の治療をすれば、カグラがその隙に容赦無く攻撃を加えてくる事がわかっていただけに、動きことが出来なかった。

 「私の『神眠竜』が敗れるとは...... なぜ、あのような獣ごときに敗れたのだ...... なぜだ......?」カグラはぶつぶつと独り言を言いながら、自ら作り出した『神眠竜』が敗れた理由を考えていた。 無敵であるはずの『神眠竜』が、たかが獣一匹に敗れた事実を受け入れられないでいる。

 「あなたにはわからないでしょうね? 獣にだって誇りや意地があるわ。 どんなに強大な力を持っていようと、相手が神であろうと、自分の大切なものを守る為に戦わなければならない時がある。 人を見下してばかりで、神気取りのあなたには決してわからないでしょうね!!」

 「意地...... 誇り......」カグラはセラの言葉を聞いても呆けたようにぶつぶつと独り言を繰り返していた。 明らかにカグラの様子がおかしい.... 完全に自分を見失っている。

 「これでまた、私とあなたの一騎討ちになったわ!! 決着をつけましょう!! カグラ!!」セラが自分を見失っているカグラに向かって言った。 

 だが、カグラは何も反応がない...... そしてしばし独り言を繰り返した後、フッと我に帰りセラの方に視線を向けた。 しかしその目は先ほどまでのカグラの目とは違い、驚くほど澄んだ目をしていた。 

 セラはカグラの澄んだ目を見て驚いた。 先ほどまでカグラの目に満ちていたセラへの敵意が消えている。 そしてカグラの全身から常に発散されていた殺気もすっかり消え去っていた。 

 「母さんから殺気が消えてる......」トキロウもカグラの雰囲気が変わった事に気がついた。 あんな雰囲気の母カグラをトキロウは見たことがなかった。 一体、カグラの身に何が起きているというのか?

 「確かにさっきまでカグラから感じていた禍々しさが無くなっているわ...... 一体どうしたのかしら?」ローザもカグラの異変を妙だと感じていた。 

 カグラは澄んだ穏やかな目でセラを見据えていた。 何も言わずただセラを見つめている...... その汚れのない瞳からは、一種の神々しささえ感じる...... セラはカグラの汚れなき澄んだ瞳を見て動けなくなった。 カグラには明らかに戦意が感じられない。 今ならカグラを倒す絶好の機会のはずだが、なぜか動くことが出来なかった。 
  
 セラが躊躇っていると、カグラは突然念じ始めた。 カグラが念じると床に敷いてあった『催眠方陣』の陣が消滅した。 カグラが『催眠方陣』を解いたのだ。

 「母さんが陣を解いた......」トキロウが突然陣を解いたカグラを見て驚きを隠せない様子だった。 

 セラもカグラが突然陣を解いた事に驚いていた。 まだ戦いは終わってはいない。 一体、カグラは何をしようとしているのか? セラはカグラの行動が理解出来なかった。

 カグラは陣を解くと、脱ぎ捨ては羽織を拾い、再びその身に羽織った。 そしてそのままセラたちに背を向け、教会の出口へと向かって歩いて行った。 カグラがセラを背を向けた。 それはカグラが戦いを放棄したことになる。

 「母さん!!」トキロウが教会から立ち去ろうとするカグラを呼び止めた。 するとトキロウに呼び止められたカグラは振り返り、戸惑うトキロウの方に目をやった。

 「時郎...... 健やかに暮らしなさい。 身体を大事にするように......」カグラが息子のトキロウに向かって気遣う言葉をかけた。 そして時郎を見つめる目には、母親としての情が見受けられる......

 「か...... 母さん......」予想もしないカグラの言葉にトキロウはそれ以上言葉が出なかった。 まさかあの母カグラから自分を気遣う言葉が出るとは思ってもいなかったからだ。 人の心を持たないと言われた母カグラが、自分に対して母親の情を見せている。

 カグラはトキロウに労りの言葉をかけると、自分を見つめて動かないセラに視線を向けた。 「世羅子、今日の戦いはこれまでとする。 だが、安心するでない。 次にそなたと会う時には、私が必ずやそなたを葬る!! 首を洗って待っているがよい!!」カグラはセラにそう言い残すと、そのまま教会の外へと立ち去って行った。

 「カグラ......」セラは立ち去っていくカグラの姿をジッと見つめていた。

 「カグラ様!! 如何されたのですか? 世羅子をあのままにしておくおつもりですか?」教会の外で戦いを見守っていたカグラの部下は、突然戦いを途中で放棄したカグラの行動を訝しげに思っていた。

 「あのまま世羅子との戦いを続けていれば、良くて相討ち...... それに戦いを続けて世羅子を追い詰めれば、世羅子が更なる力に目覚める可能性がある。 そうなれば私とて容易に世羅子は倒せない。 それに今はまだ私も倒れるわけにはいかぬ。 私には時枝を何としてでも一人前の後継者に育てなければならない義務がある。 世羅子との決着は、時枝を後継者に育ててから着ければ良い!! 今はまだ雌雄を決する時では無いと判断したゆえの撤退だ......」冷静に状況を分析したがゆえの撤退であると部下に説明するカグラだったが、その表情には悔しさのようなものを若干だが滲ませていた。 しかし、どこか納得しているようにも感じる。 部下たちもこんなカグラを見たことがないのか、戸惑いを隠せないでいた。

 「そのようなお考えでありましたか...... しかし、世羅子はカグラ様のお力を持ってしても容易に倒すことが出来ないとは、なんと恐ろしいやつなのでしょうか......」

 「世羅子の力はこれからもまだまだ成長するだろう。 私も日本に帰り修行をやり直さねばなるまい...... すぐに日本に帰国する準備を整えよ!!」

 「畏まりました。 カグラ様!!」カグラ命を受けた部下たちはすぐに帰国の準備に取り掛かった。 

 カグラが立ち去った聖堂は、先ほどまでの激戦が嘘のように静まり返っていた。 

 「世羅子!!」

 「セラ!!」

 カグラが立ち去ったのを見て、トキロウとローザがセラに向かって駆け寄ってきた。 そして二人はセラに抱きついた。 「世羅子良かった!! 無事で本当に良かったよ!! もうダメかと思ったよ......」トキロウはセラを強く抱きしめながら言った。 トキロウは心配でならなかった。 セラがカグラにやられてしまうのではないかと心配で心配でならなかった。 

 「時郎......」セラは抱きついているトキロウの頭をそっと撫でた。 トキロウがどれだけ自分のことを心配していたのかがトキロウの身体から伝わってくる。

 「セラ...... 本当に良かったわ!! 心配したのよ本当に...... 本当に...... 本当に無事で良かった!!」ローザもトキロウと同じように心配で堪らなかった。 

 「ありがとう...... ローザ。 トキロウを守ってくれて......」セラはローザに礼を言いながらローザのことを抱きしめた。 三人はお互いの存在を確認し合うかのように強く抱きしめあった。 

 「セラ...... 初めて私に礼を言ってくれたわね......」セラが初めて自分に礼を言った。 ローザは感激のあまり涙が溺れてきた。

 「世羅子よ...... これからはセラじゃなくて、世羅子でいいわ......」

 「セラ...... いいえ。 ありがとう、世羅子......」セラが遂に自分の事を認めてくれた。 ローザにとってこんな嬉しい事はない。

 「あっ!!」抱きしめあっていたセラだったが、何かに気づいたように急に二人から離れた。 そしてすぐに床に倒れている狼の元に駆け寄り、様子を伺った。 狼はまだ微かだが息があった。(まだ間に合うわ!!)セラは狼がまだ生きていることを確認すると、すぐにヒーリング能力で治療を開始した。

 セラが治療を開始すると、傷だらけだった狼の身体の傷がみるみる治癒していく。 そして傷が完全に消えると狼が意識を取り戻した。 意識を取り戻した狼は元気に立ち上がった。

 「良かった......」セラは元気に立ち上がった狼を抱きしめた。 「ありがとう......」セラは狼を抱きしめながら自分助ける為に戦ってくれた狼に礼を言った。 傷だらけになりながらも、セラの為に戦った狼にいくら感謝しても仕切れない気持ちでいっぱいだった。 

 狼は抱きつくセラの顔をペロペロと舐め始めた。 どうやらセラの事を心配しているようだ。 「うふふ...... 私は大丈夫よ!! 心配してくれてありがとう!!」 戦いを終えて戯れるセラと狼の様子を、トキロウとローザは微笑ましそうに眺めていた。 

 狼はセラとしばし戯れた後、教会の出口へと向かっていた。 そして出口で一旦立ち止まり、大きな遠吠えをあげた。 それは戦いを終えた戦士が誇らしげにあげる雄叫びのようであった。 狼は遠吠えを終えるとそのまま教会を出て山へと帰って行った。

 「ありがとう......」狼が山へ帰るのを見送っていたセラは心の中で感謝の言葉を呟いた。 「世羅子を助けてくれてありがとう......」トキロウとローザもまた、セラと同様に心の中で感謝の言葉を呟いた。

 「立派な狼のリーダーだね。 あれだけ傷つきながらも、最後の最後まで諦めない精神を僕も身見習わなきゃ...... 僕も諦めないで頑張るよ!!」不治の病と戦うトキロウの胸に、どんな苦境に立たされても諦めなかった狼の姿がしっかりと焼きついていた。 

 「そうね...... 最後の最後まで希望を捨てないことの大切さを、あの狼のリーダーは教えてくれたわ。 私は今回の戦いで、自分の精神の弱さを自覚したわ...... まだまだ修行が足りないわね......」ローザもカグラとの戦いで、己の精神的な弱さを自覚した。

 「そんなことないですよ!! ローザさん凄い力を発揮したじゃないですか!! 母さんも驚いてましたし、僕もびっくりしました。 あんな凄い力を内緒にしているなんて、ローザさんも人が悪いなぁ......」

 「私も指輪に、あんな隠された力があるなんて知らなかったわ!! この指輪は代々『フェアリー家』に受け継がれてきたものだということしか聞いていなかったから、正直わたしも驚いているのよ...... 一体、この指輪にはどんな秘密が隠されているのかしら......?」指輪が発揮した謎の力...... ローザはこの指輪には、何か大きな秘密が隠されていると感じていた。

 「秘密かぁ...... 僕も興味がありますね。 もしかすると『古代ヒプノニア』と何か関係があるのかも......?」トキロウは指輪の秘密に興味がある様子だった。 そして自分なりに推測していた。

 ローザはマザーの言葉を思い出した。 ”あなたも真の力に目覚めるでしょう” 会談の時にローザに言ったマザーの言葉...... この言葉の意味を考えるとマザーは指輪に秘められた力を知っていた。 何故マザーは指輪に秘められた力を知っていたのか? トキロウの推測の通り、『古代ヒプノニア』と関係があるのか? 考えれば考えるほど謎は深まるばかりだった......

 「でも、みんな無事で本当に良かったです!! 母さんが教会にやってきた時には、もう駄目かと思いましたよ......」トキロウはよほど不安だったのだろうか、皆が無事に済んだことに安堵した様子だった。

 「それにしても一番の謎は、何故カグラが撤退したのかってことね? 何か様子がおかしかったように感じたけど......」ローザはカグラが突然戦いを辞めて撤退したことを疑問に感じていた。 あれほどまでにセラへの憎しみと殺意を漲らせながら、セラに戦いを挑んでいたカグラが、急に撤退をしていった。 一体何故なのか? それに撤退する時のカグラの様子は確かにおかしかった。

 「それも僕にはわかりません...... 世羅子との戦いの中で、母さんの心境に何か変化があったのかもしれません...... 世羅子は何か感じ取ったかい?」トキロウもカグラが急に撤退した理由がわからなかった。 そしてセラに理由を尋ねてみた。 戦っていたセラなら何かを感じ取ったと思ったからだ。

 しかしセラは首を横に振った。 セラにも理由はわからないようである。 

 「そっか...... 世羅子でもわからないのか...... まぁ、これで世羅子を付け狙うのを諦めてくれたら嬉しいんだけどね......」

 「そうね。 撤退したという事は、セラの事を諦めた可能性も考えられるわね。 セラの力が想像以上だったから、倒す事は不可能と感じて諦めたのかもしれないわね」

 セラはトキロウとローザの考えとは違っていた。 セラは撤退する直前のカグラの雰囲気に、カグラという人間の真の恐ろしさを垣間見た気がした。 カグラにはまだ余力があった。 もしあのまま戦いを続けていれば良くて相討ちか、自分が負けていただろう。 カグラもそれは重々承知していた筈だ。 しかしカグラは撤退する事を選んだ。 あれだけセラに対する憎悪の感情を剥き出しにし、プライドの塊のようなカグラが、撤退という決断を下した冷静な状況判断にセラは脅威を感じた。 カグラはただの暴君では無い。

 そしてカグラが垣間見せた汚れなき純粋で澄んだ瞳...... さらにカグラから感じた神々しさ...... あれこそまさに『天眠大神の化身』のように思えた。 あれが本当のカグラの姿なのか? 憎しみと蔑み、傲慢と我欲にまみれたカグラならば倒せただろう。 しかしあの最後に見せた、まるで神のようなカグラならばきっと倒せす事は出来なかった。 

 いずれ再びカグラと雌雄を決する時が来る。 そして次に戦う時には、カグラはさらに強大になっているだろう。

 しかしセラは負けるわけにはいかない!! カグラがどんなに強大になろうと、己の未来の為にも決して負けるわけにはいかないのだ!!

 セラは再びやってくるであろうカグラとの決戦に必ず勝利すると心に強く誓った。





「催眠聖女 ローザ・フェアリー」(26)終




(27)へ続く











  










  

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