『催眠聖女 ローザ・フェアリー』(24)

 カグラが作り出した『催眠方陣』から、巨大な竜が現れた。 その巨大な竜は眩いばかりに光り輝きながら、教会の聖堂の中をまるでその存在を誇示するかのように飛び回っていた。

 「あの竜は一体なにっ?! トキロウさん......」ローザは我が目を疑った。 先ほどの黒い巨人とは全く異質な雰囲気を巨大な竜から感じ取っていた。 その竜は黒い巨人とは違い禍々しい悪意のようなものは感じはしなかった。 何か莫大なエネルギーの塊が竜の形となって現れているように感じた。

 「まさかあれが『神催眠の法』の秘術である『眠獣召喚』なのか......?! 秘伝の書に書いてあるのを見た事はありますが、実際に目の当たりにするのは僕も初めてです......」トキロウも驚きを隠せない様子だった。 驚きのあまり呆然としながら聖堂を飛び回る竜を見上げていた。

 「眠獣...... ?! それは一体何なの? さっきの黒い巨人とは何かが違う気がするわ......」

 「ローザさんの感じ取った通り、さっきの黒い巨人とは全くの別物です。 黒い巨人は催眠術にかかったローザさんに母さんが幻覚として見せていたものですが、この竜は『催眠法力』によって具現化されたものです。 これは幻覚催眠ではありません......」

 「具現化された......?! じゃあ、あの竜は実際に存在しているということなの?! そんなことが出来るなんて人間業とは思えない......」ローザはカグラの神懸かり的な力に愕然とした。 

 「この術は『神催眠の法』の秘伝中の秘伝です。 歴代の『姫美島』の当主の中でも、この術を使えた者はごく僅かだと聞きました。 事実、祖母はこの術を使う事は出来ません...... 『天眠大神の化身』と言われる母さんだからこそ出来る術なんです...... 悔しいですが母さんの力は本物です......」トキロウは悔しそうに唇を噛み締めながら言った。 憎たらしい母親だが、その力は紛れもなく本物であると認めざるを得ない。

 「トキロウさん......」悔しそうにしているトキロウを見て、ローザもトキロウと同じ気持ちだった。 なぜ神は、傲慢で自分勝手で人を人と思わないカグラに、このような神の力とも思えるような超常的な力を与たのか? 人の幸せの為に力を使わないカグラに力を与えるとは、神に慈悲は無いのかとさえ思った。

 竜はまるでセラを威嚇するように、セラの周りを悠々と飛び回っていた。 しかしセラは竜が飛び回っているのを全く気にする様子は無く、威嚇されても微動だにしない...... ただジッと、カグラのことを見据えていた。

 「ふふふ...... この『神眠竜』を目の当たりにしても、動じないとは大した胆力よ...... だがこれで勝敗は決した。 もうそなたに勝ち目は無いぞ、世羅子......」カグラは勝利を確信しているのかのように不敵に笑った。

 するとジッとカグラを見据えていたセラの瞳が輝き出した。 瞳が輝くと同時に身体から金色のオーラが噴出し、瞬く間にオーラが聖堂を覆っていく。 これは先ほどセラが黒い巨人を消滅させた力だった。 

 「セラが動いたわ!!」今までは後手に回っていたセラだったが、ここでようやくセラが先に動いた。

 だが、セラの力が聖堂を覆い始めた瞬間、飛び回っていた竜がカグラの身体に巻きついた。 竜はまるでカグラを守るようにカグラの身体を覆っていた。 そしてカグラに巻きついた竜は咆哮をあげた。 その咆哮は聖堂を揺るがすほどの凄まじさだった。 トキロウとローザは竜が放った凄まじい咆哮に吹き飛ばされそうになりながら慌てて耳を塞いだ。 竜の口から放たれた咆哮の衝撃波は聖堂を揺るがし、その衝撃波が聖堂を覆うセラのオーラを一瞬で掻き消した。 

 竜の咆哮によってセラの力が一瞬で聖堂から消えた。 その光景にトキロウとローザは我が目を疑った。 「世羅子の力が消えた...... まさかこれが『破眠』というやつなのか......」トキロウは信じられないといった様子だった。 

 「セラの力が一瞬で消えるなんて...... 信じられない...... セラの力が通用しないの......」ローザもトキロウと同じように信じられなかった。 セラの力を一瞬でかき消すカグラの秘術の凄さを実感した。

 トキロウとローザの二人が信じられないといった様子を浮かべているのとは裏腹に、セラは先ほどと同じように全く動じた様子を見せていなかった。 ただ些かカグラを見据える目が険しくなったように感じる......

 「ほう...... 我が秘術の真髄を目の当たりにしても動ぜずか...... 強がりもそこまでいくと大したものよ。 そなたの力はもう私には効かぬぞ。 そなたの催眠は全てこの『神眠竜』が掻き消すのだからな...... いつまで涼しい顔をしていられるか見ものだな......」 カグラは『神眠竜』によって力をかき消されたにもかかわらず、尚も微動だにしないセラを見て、カンに触ったのか少し苛立った様子を見せた。 正直、セラが狼狽する姿を見たかったのが本音なのだろう。

 「私が狼狽る姿でも見たかったの? あなたの安っぽい自尊心に付き合うつもりは無いわ。 『天眠大神』の名が聞いて呆れるわね...... 私はあなたのそういうところが大嫌いなの!!」セラはカグラの心中を見事に見抜いていた。 セラは、己が絶対的な強者であり、常に他者を見下して、己の存在を誇示したいというカグラの傲慢さが何より嫌いだった。

 「何っ?!生意気なことを!! この後に及んでこの私を愚弄するとは大した余裕だな...... だが、本音はそうではあるまい。 自分の術が通用しない事に本当は焦っているのでだろう...... 強がりでも、挑発でもしておかねば心が持たないはず......」セラの挑発にカグラの表情が強張った。 セラに己の心中を見抜かれていたのが気に食わなかった。 そしてセラが挑発してきたのは、心の動揺を隠す為だと感じた

 「好きに思えばいいわ。 私はあなたがどんな秘術を使ってこようと決して負けない!! 必ず倒すと時郎と約束した。 その約束を必ず守る!!」セラに恐れはなかった。 トキロウに必ずカグラを倒すと約束したのだ。 そして再びセラの瞳が輝き、身体からオーラ放出させて聖堂を覆い始めた。

 「馬鹿めが!! もうその力はもう通じぬわ!! 『神眠竜』よ、また吹き飛ばしてやるがよい!!」セラが再び力を使ったのを見てカグラはセラの力を吹き飛ばすように『神眠竜』に命じた。 そして『神眠竜』が再び激しい咆哮をあげると、またしてもセラの力は一瞬で吹き飛ばされた。

 「駄目だ!! やっぱり通じない...... これじゃ母さんには勝てない......」セラの力が再び通じないのを見て、トキロウは打つ手がないといった様子だった。

 「トキロウさん。 何とかしてあの竜を倒す事は出来ないの......? このままじゃセラはカグラにやられてしまうわ......」

 「あの竜は母さんのもう一つの精神なんです。 母さんの精神を『催眠法力』の力を使ってもう一つ作り出し『眠獣』として具現化したものなんです。 具現化した『眠獣』は本体をあらゆる催眠から守る『破眠』というものを使います。 作り出した精神を具現化したものだから『眠獣』に催眠は効きません。 だから世羅子の催眠は全てあの竜が受け止めて消してしまうんです」

 「もう一つ精神を作る...... じゃあ、あの作り出した『眠獣』がカグラの身代わりになって催眠の力を受け止めて消しているのね...... なんて術なの......」

 「あの『眠獣』を倒すには、世羅子も『眠獣』を作り出して『眠獣』同士を戦わせるしか方法は無いと聞いています。 でも世羅子は『催眠法力』が使えないので、『眠獣』を作り出せません。 母さんは世羅子が『催眠法力』を使えないことを見抜いて、この術を使ったんだと思います」

 「そんな...... それじゃセラに勝ち目が無いということなの...... 何とかならないのトキロウさん!!」

 「......」ローザの悲痛な訴えを聞いてもトキロウは返す言葉が無かった。 何とかしてこの状況を打開する方法を考えているが、さすがのトキロウもこの状況を打開する方法が思いつかなかった。 トキロウの表情に焦燥感が感じられる。 

 「トキロウさん......」ローザもトキロウが苦しんでいるのがわかった。 誰よりもセラのことを心配しているのはトキロウなのだ。 そのセラが追い詰められている。 トキロウは身を引き裂かれる思いであるだろうと......

 「これでわかったであろう。 そなたに打つ手は無いのだ。 じっくりと嬲り殺しにしてやろう...... 私に挑んだ愚かさを地獄で後悔するがいい!!」カグラはもう打つ手が無くなったセラを嬲り殺しにするつもりだった。 積年の恨みを、セラを嬲り殺しにする事によって晴らすつもりだ。

 『神眠竜』の口から炎のようなものが漏れ出し始めた。 そしてセラに向かって『神眠竜』は激しい炎を吐き出した。 『神眠竜』から吐き出された炎をはたちまちセラの身体を覆い尽くした。

 「世羅子ぉぉぉぉっ〜〜〜〜!!」

 「セラぁぁぁぁっ〜〜〜〜!!」

 セラの身体が炎に包まれたのを見てトキロウとローザの二人は悲鳴をあげた。 『神眠竜』の吐いた炎が、渦巻くようにセラの身体を覆い焼き尽くそうとしている。 その光景は悪夢のような光景だった。

 「ふははははっ!! 紅蓮の炎に包まれて苦しみながら骨まで焼き尽くされるがよいわ!!」炎に焼かれるセラの姿を見て、カグラは胸がすくような爽快な気分だった。 

 カグラが高笑いをしていると、突然セラを覆っていた炎に亀裂が入り金色のオーラが亀裂から発せられた。 「何だ?! 世羅子を覆っていた炎が金色のオーラに切り裂かれていく...... 何が起きているというのだ......?」突然炎が切り裂かれ始め、高笑いしていたカグラの笑いが止まった。 

 そして亀裂から金色のオーラが激しく吹き出し始め、吹き出した金色のオーラがセラの身体を覆っていた炎を吹き飛びした。 吹き飛んだ炎は消滅し、セラの姿が露わになった。 セラは無事であった。

 「世羅子!! 無事だったんだね!!」セラが無事な姿を見てトキロウは思わず歓喜の声をあげた。

 「セラ...... 無事で良かった......」ローザもセラの無事な姿を見てホッと胸を撫で下ろした。

 「炎を吹き飛ばしだと...... あの力で炎から身体を守っていたのか...... なるほど。 あの力は身を守ることも出来るようだな......」カグラはセラが無事であった事に一瞬驚いたが、すぐに気持ちを切り替えてセラの能力を分析した。 

 「世羅子、大丈夫かい?」トキロウがセラに聞いた。

 「大丈夫よ!! この程度なら問題ないわ」セラはカグラを見据えながら答えた。 セラは一時たりともカグラから視線を切らない。

 「トキロウさん!! セラもカグラの術を消しとばしたわ!! 二人の力は互角じゃ無いかしら? セラにも勝ち目が出てきたわよね!!」ローザはセラがカグラの術を消しとばし、セラにも勝ち目があるのではと感じた。

 だがトキロウは浮かない顔をしていた。 「どうしたの、トキロウさん? まだ何か心配なの......?」ローザは表情が曇るトキロウを見て不安になった。

 「確かに世羅子は『眠獣』の攻撃を防ぎました。 ただそれは『眠獣』の攻撃を凌いだだけで、『眠獣』自体は消えていません。 あの『眠獣』を何とかしなければ、このままジワジワとやられてしまいます。 それこそ母さんの言うように嬲り殺しです......」トキロウはセラの置かれている状況が決して好転していないと見ていた。 カグラに『眠獣」がいる限り、セラの催眠は通用しない。 セラにカグラを倒す手が無いのだ。 しかしカグラにはまだ多くの秘術がある。 セラがこのままカグラの攻撃を全て受け止められるとは考えづらいのが現実だった。 

 「そんな......」トキロウの言葉にローザは愕然とした。 勝てるチャンスが出てきたと思ったが、状況はセラに不利のままだ。 『眠獣』をどうにかしなければ、トキロウの言う通りセラはこのままカグラに嬲り殺しにされてしまうのかと......

 「随分と余裕を見せているようだが、我が『眠獣』を倒さねば、私に攻撃を加える事は出来んぞ。 お前には『眠獣』を倒す術は無いはず。 どこまでその余裕が持つか試してやろう」カグラはセラが『眠獣』を倒す術が無いことを見抜いていた。 そして新たな攻撃手段に出た。

 カグラは念を込め始めた。 セラはどんな攻撃がきてもいいように身構えている。 果たしてカグラは次にどんな攻撃を繰り出そうとしているのか?

 「行くぞ世羅子!! 『天地創転の術』を受けてみるがよい!! はあぁぁぁぁっ!!」カグラが気合を込めると突然教会が激しく揺れ始めた。 

 「これは地震?!」まるで地震のように教会が激しく揺れ始め、トキロウとローザは立っているのがやっとの状態だった。 そして地面に大きな亀裂が生じ始めた。 

 「地面が崩れるわ...... 早く避難しないと....... セラ、トキロウさん急いで避難しましょう!!」ローザはトキロウの手を握り、亀裂が走っていないところまで避難する事にした。 しかしセラは地面が揺れて今にも崩れ落ちそうな状況でも、一向に逃げようとしない。 

 「セラ!! 早く逃げて!!」ローザがセラに向かって叫ぶが、セラはカグラを見据えたまま動かない。 そして割れた地面からマグマのようなものが吹き出し始めた。 吹き出したマグマは瞬く間に聖堂の床一面に広がり始めた。

 トキロウとローザは段差のある聖壇へと避難した。 間一髪であった。 ドロドロに溶けたマグマが床一面を覆った光景を見て二人は言葉を失った。 「セラは......?」ローザはセラの様子を伺った。 すると、セラは何と床一面に広がったマグマの上に浮いていた。

 「セラがマグマの上に浮いているわ...... 大丈夫みたい......」

 「そうか!! 母さんの狙いがわかったぞ!!」トキロウは何かに気づいたようだった。

 「カグラの狙い......?」

 「母さんは世羅子の催眠量を消耗させる作戦に出たんです。 この術は幻覚催眠の一種です。 もちろん普通の幻覚催眠とは比べ物にならない程強力です。 その強力な幻覚催眠に抵抗するには、相当な催眠力が必要になります。 世羅子は母さんの幻覚催眠に抵抗してマグマの上を浮いていますが、相当に催眠量を消耗しているはずです。 母さんも世羅子が抵抗してくるのを承知で幻覚催眠を使い、世羅子の催眠量を削る事にしたんです。 このまま世羅子が抵抗を続けていれば、やがて世羅子の催眠量は尽きてしまいます...... そうなれば世羅子はマグマに飲み込まれて、一巻の終わりです......」

 「でもそれならカグラだって、これほどの幻覚催眠を使えば同じように催眠力が消耗するはずでしょ...... いくらカグラでもこれほど強力な幻覚催眠を長い間使い続けるのは無理ではないのかしら...... はっ?! まさか......」ローザは何かに気づいた。

 「ローザさん、そのまさかです。 母さんには『催眠方陣』があります。 あの陣が有る限り、母さんの催眠力は尽きる事は無いんです。 それがわかっているから、母さんはこの戦法を取ったんです。 あの陣が有る限り母さんの催眠力は無尽蔵に近い...... 持久戦になれば母さんが圧倒的に有利なんです」

 「カグラはそこまで計算して術を使ったのね...... なんて狡猾で憎たらしい人間なの......」狡猾な戦法をとってくるカグラにローザは憎々しさを覚えた。    

 「おそらく母さんは先ほどの術で、世羅子の能力だけではなく、どの程度の催眠力を放出出来るのかを見極めたんです。 一瞬の催眠力の放出力なら、おそらく世羅子と母さんはほぼ互角。 しかし催眠力の量となれば、『催眠方陣』を持つ母さんが世羅子を遥かに上回ります。 僕は母さんを甘くみてました。 まさか母さんがここまで狡猾に攻めてくるとは...... 僕はもっと母さんが力押ししてくると思っていたのに......」トキロウの予想とは裏腹に、セラの能力を正確に分析し、戦況に合わせて的確な戦法をとってくるカグラにトキロウは自分の考えが甘かったことを後悔した。 

 「どうする、世羅子......? そのままではいずれ催眠力は尽きるぞ。 催眠力が尽きた時こそ、そなたの最後だ。 マグマにその身を溶かされて無残な死に様となろうな...... ふふふふふ......」

 するとマグマの上に浮いているセラが、目を閉じて精神を集中させながら大きく息を吸い込んだ。 「はあっ!!」そして気合と共に全身から金色のオーラを一気に噴出させた。 セラの身体から勢いよく噴出したオーラは、床一面に広がっていたマグマを一瞬で吹き飛ばし消滅した。 

 「ふふふ...... やはりそうきたか」幻覚催眠を打ち破られたカグラだったが全く気にしていない様子であった。 そしてカグラは再び念じ始めた。 するとまたしても地面が揺れ、亀裂から再びマグマが吹き出した。 そして床一面をマグマが覆う......

 セラはまた目を閉じて精神を集中させた。 そして先ほどと同じように気合いと共に、一気にオーラを噴出させてマグマを吹き飛ばした。

 しかしカグラはセラが幻覚催眠を吹き飛ばしたのを見てニヤリと笑った。 吹き飛ばすのは想定済み...... いや、あえて吹き飛ばすように仕向けていたのだ。 

 見事に二度もカグラの強力な幻覚催眠を打ち破ったセラだったが、様子がおかしい...... 激しく呼吸が乱れ、顔から大量の汗をかいている......

 「セラが疲れてる...... かなり消耗しているわ...... 二度も幻覚催眠を打ち破った事で、相当に催眠力を消耗したんだわ...... これがカグラの狙いだったのね......」ローザはセラが激しく消耗しているのを見て、カグラの思惑にようやく気づいた。

 「あのままマグマに浮いていても世羅子は何も出来ずに、ただ消耗してくだけです。 世羅子ならきっと幻覚催眠を吹き飛ばすはずだと読んで、あえて繰り返したんです。 あれだけ強力な幻覚催眠を吹き飛ばすとなれば、相当な催眠量を使います。 二度も吹き飛ばした事で、世羅子の催眠量は一気に減ってしまったはずです...... 対する母さんの催眠量は無尽蔵...... どちらを選んでも催眠量を削る二重の罠を張っていたんだ!! くそったれ!!」珍しくトキロウが汚い言葉を吐いた。 それだけセラが追い詰められている証拠だった。

 「私の幻覚催眠を二度も吹き飛ばすとは大したものよ。 しかしそのせいで、かなりの催眠量を消耗したはず...... その証拠にそなたのその大量の汗と呼吸の乱れは、催眠力が尽きかけている何よりの証拠...... もはや何も出来まい...... ふふふふふ......」カグラはセラの催眠力が尽きかけているのを見抜き、勝利を確信したのか不敵に笑った。

 (負けた......)トキロウとローザも、もはやセラに勝ち目がないと思った。 カグラの言う通り、セラはもう何も出来ない。 催眠力が尽きかけているだけでなく、『眠獣」で守られたカグラには催眠自体が通用しない。 セラの負けは確実であった。

 しかしここで奇妙な事が起こった。 何と追い詰められているセラが笑ったのだ...... 

 「セラが笑っている......」ローザはセラが笑っているのを見て不思議に思った。 セラ自身、自分が追い詰められているのはわかっている筈...... 絶体絶命のピンチを迎えているのに、なぜセラは笑っているのか......?

 「何が可笑しい......? この後に及んで笑うとは...... 追い詰められて気でも触れたか? 哀れなものよ......」カグラは笑うセラを見て、哀れみすら感じた。 自身の勝ちは揺るぎようがない。 カグラはセラがもはや勝ち目がないことを悟り、最後の強がりとして笑っていると思っていた。

 「世羅子...... もしかしてまだ戦いを諦めていないのかい......」セラはどんなに追い詰められても自暴自棄になるような人間ではない。 そんなセラが追い詰められて笑っているのだ。 セラの笑みを見たトキロウは、その笑みが追い詰められて気が動転しているとか、諦めの笑いとかでは無いと感じた。 もしかしてこの絶望的な状況を覆せる策があるのかと期待した。

 笑みを浮かべていたセラが目を閉じて、精神を集中させ始めた。 一体何をしようというのか? するとセラの身体からまた金色のオーラが噴放出された。 しかし放出されたオーラは先ほどとは違い、聖堂を覆うような事は無く、オーラは一つの塊となって、まるで閃光のように物凄い速さで教会の外へと飛んで行った。 

 「何だ今のは?! そなたの力は見当違いの方に飛んで行ったぞ...... 一体何をしたのだ世羅子?!」カグラはセラの奇妙な行動が理解出来なかった。 この後に及んで、まだ何か策があるとでもいうのか?

 「すぐにわかるわ......」セラはカグラをキッと睨みつけながら一言だけ言った。 





「催眠聖女 ローザ・フェアリー」(24)終





(25)へ続く  






                 










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