催眠道化師(完結)

 秀人と澪奈の二人は都心にある霊園を訪れた…… この霊園には澪奈の兄、『立花 晴彦』 が静かに眠っている……  霊園は都心にあるとは思えないほど静かな場所であり、この霊園には立花家の代々の墓があった。 晴彦はその立花家の代々の墓に埋葬されている。  「晴彦兄さん……」 二人は晴彦が眠る墓の前に着いた。 澪奈は兄の墓参りに来るのは久しぶりだった。  「お兄さん……」 秀人は初めて…

続きを読む

催眠道化師(79)

 秀人、澪奈、坂崎の三人は事件解決以降、初めて三人で坂崎行きつけの焼き鳥屋に集まった。 秀人と澪奈は事件後、目の回るような忙しさだっただけに、久しぶりの息抜きといったところだった。  「いやぁ~~~…… 本当に忙しかったな…… あんなに報道陣に追い掛け回されるなんて二度とゴメンだよ…… 最近はやっと報道陣も来なくなって本当に良かったよ…… もう、こりごりだ……」 事件の被害者であり、主犯の…

続きを読む

催眠道化師(78)

 三枝 枝里子と反町の逮捕は、マスコミによって大きく報道された。 社会の悪を暴く美人人気キャスターと、カリスマイケメン経営者の逮捕に世間は大きな衝撃を受けた。  事件の詳細は連日、ニュースやワイドショーなどで報道され、政界や財界への関与なども疑われており、マスコミは激しい報道合戦を続けていた。 三枝が澪奈を陥れるために起こしたという事実が報道されると、マスコミは事の真相を澪奈に聞こうと、澪…

続きを読む

催眠道化師(77)

 「まどかさん。 今、立花さんから連絡があり、『闇の催眠術師』 の正体は人気キャスターの三枝 枝里子だったそうです……」 澪奈から事件の解決の報告があり、北条は、『催眠魔女』 のリーダーである、まどかに事件の解決を伝えた。  「三枝 枝里子……? 立花さんの話では、彼女も一緒に事件の詳細を調べていたはずじゃ……」 まどかは、『闇の催眠術師』 の正体が三枝 枝里子だと聞き、少々驚いた様子だっ…

続きを読む

催眠道化師(76)

 「澪奈、怪我は無いかい?」 秀人は戦いが終わった澪奈の身を案じていた。   「私は大丈夫。 秀人さんこそ大丈夫なの?」   「俺も大丈夫だよ!! ただ、ちょっと素手で殴りすぎたせいか、拳をかなり痛めたけど……」 秀人の拳は殴った相手の返り血と、拳の皮がめくれて血まみれだった。 元ボクサーの秀人だが、これほど人を素手で殴った経験は無かった。   「大丈夫なの?! 早く病院に行か…

続きを読む

催眠道化師(75)

 『愛』 の心を取り戻した澪奈の瞳はかつてない輝きを放っていた。 眩いばかりに輝き、その輝きには憎しみを浄化していく力があった。 その力が、三枝の憎しみの催眠空間を瞬く間に消滅させていく……  「消える…… 憎しみの催眠の力が…… あの光は何なんだ?! 今までの立花 澪奈じゃない!! これが、『催眠魔女』 の真の力なのか……」 三枝は澪奈から沸き起こる強い力を感じていた。 自分とは全く性質…

続きを読む

催眠道化師(74)

 澪奈は三枝の挑発に乗せられ、三枝に対する憎しみの心を増大させていった。 数々の澪奈を陥れるための卑劣な策略…… その策略によって多くの人間が三枝の犠牲となった。 愛する秀人も…… 秀人の友人も…… その恋人も…… 無関係の人間を巻き込み、貶めていく……  澪奈の心の中を埋め尽くしていくのは、三枝に対する怒りと憎しみ…… (許せない!! 絶対にあなたを許してはおけない!!) 心を埋め尽くす…

続きを読む

催眠道化師(73)

 (こいつら、どうやったら倒せるんだ……) 秀人は心の中で呟いた…… 三枝の催眠術によって、『催眠狂人』 となった反町に、いくらパンチを浴びせても倒れない…… 秀人の拳はもう悲鳴を上げていた。   「殺すっ!! 神山、ぶっ殺してやるっ!!」 反町は狂ったような目で秀人を睨み付けながら吼える。 反町は衰えるどころか、攻撃を食らえば食らうほど秀人への殺意が増幅していった。  坂崎を襲う工…

続きを読む

催眠道化師(72)

 『闇の催眠術師』 である三枝 枝里子の、『闇の催眠』 が三人に襲い掛かる!!  「秀人さん!! 坂崎さん!! 三枝さんが催眠術を使い始めたわ!! あの黒い渦を見ないように気をつけてっ!!」 澪奈が二人に警戒するように言った。 催眠術師でない二人では、三枝の背後に浮かぶ、『闇の催眠』 の力に対抗することは出来ない。 対抗できるのは、『催眠魔女』 である澪奈だけだった。  「わかった!…

続きを読む

催眠道化師(71)

 反町が拳銃を取り出し、三人に狙いを定める。 冷たく黒光りする銃口に狙われた三人は、その場から動くことが出来なかった……  「く…… 卑怯な……」 どこまでも卑劣な反町の凶行に秀人は唇を噛んだ……   「反町っ!! この卑怯者!! 男なら素手で勝負しなさいよ!! 拳銃なんか出して、どこまでも恥知らずで、みっともない奴!! この短小包茎野郎っ!!」 拳銃に狙われていても、澪奈は全く怯ん…

続きを読む

催眠道化師(70)

 『闇の催眠術師』 の正体である三枝が、その邪悪な本性を現したことで、秀人と澪奈は激しく動揺していた……  「三枝さん…… どうして? 私はあなたを大学時代から尊敬していたのに…… 私たちは友達でしょ……?」 澪奈はまだ信じられなかった。 なぜ、三枝が自分を陥れようとしているのかわからない……   「友達面しないでもらいたいわね…… 言ったでしょ!! 私は大学時代からあなたのことが大…

続きを読む

催眠道化師(69)

 「さ、、、、坂崎!! お前、北海道に行っていたんじゃ……?!」 北海道に行っていたはずの坂崎が、突然姿を現したことに工藤は動揺を隠せなかった。 反町も同じである。 二人は何がどうなっているのか状況が理解できなかった。  「坂崎さん!! 北海道に行ったんじゃないんですか?」 当然、秀人も反町達と同じように状況が理解できなかった。 澪奈にいたっては、驚きのあまり、まるで狐につままれたような表…

続きを読む

催眠道化師(68)

 「こいつ…… 一体何を考えてるんだ……?」  秀人からの予想外の提案に反町は戸惑いを感じていた。 ここまで、自分を犠牲にする人間には会ったことが無い…… 人を利用し、食い物にしていく反町には秀人の思考が読めない……  「どうする反町? 俺と三枝さんとの交換に応じるのか? それとも、まさか俺の提案に怖気づいたか?」 秀人が戸惑う反町を挑発した。 これも秀人の賭けだった。 プライドの高…

続きを読む

催眠道化師(67)

 秀人と澪奈の二人は、三枝 枝里子を取り戻すため、反町の指定した場所へと向かった。 指定された場所は、埠頭にいくつもの倉庫が立ち並ぶ場所であったが、すでに夜になっていたので、人も気配は全く無かった。  「何か凄く静かだ…… 人の気配が全く無い……」 秀人は不気味な静けさに不安を感じていた。 人が全くいないことが、より不安を掻き立てる……  「本当に誰もいないわ…… 確かに取引をするに…

続きを読む

催眠道化師(66)

 「フフ~ンフ~~ン♪ フフ~フ~~ン♪」 秀人は鼻唄を歌いながら、ビルの床をモップで磨いていた。 退院して直ぐに職場に復帰した。 いつまでも休んでいるわけにはいかない。  職場に戻ると、会社の上司や同僚達は戸惑ったような表情をしていた。 秀人は当然そういった反応があることは予想していた。 刺されたなどと聞けば、誰だって秀人のことを怪しむだろう。 それこそ秀人には裏の顔があり、陰で悪事を働…

続きを読む

催眠道化師(65)

 退院祝いを終えて、秀人と澪奈はタクシーで秀人のアパートへと向かっていた。 二人はタクシーの車内では黙ったままだったが、お互いの手はしっかりと握り合っていた。  澪奈は以前よりも秀人の心が自分に近づいていることを感じていた。 刺される前の秀人は、澪奈に対してどこか遠慮をしている様子で、自分にあまり心を開いてくれていなかった。   秀人に、『催眠魔女』 であることを告白し、永遠に愛する…

続きを読む

催眠道化師(64)

 秀人、澪奈、坂崎、三枝の四人は、坂崎の行きつけの焼き鳥屋で、秀人の退院祝いをしていた。 秀人は順調に回復し、今日めでたく退院した。   「あっーーー!! 最高っ!!」 澪奈は大ジョッキのビールをグビグビと一気に飲み干して、秀人が退院したのがよほど嬉しいのか、上機嫌だった。 豪快にビールを飲み干す澪奈の様子を、秀人達は苦笑いしながら眺めていた。 退院したばかりの秀人はさすがに酒は控えめにし…

続きを読む

催眠道化師(63)

 「何だとっ?! 愛理が行方不明だとっ?!」 工藤から愛理の行方がわからなくなった事を聞いた反町は、思わず声を荒げた。  「はい…… 勤め先のクラブから忽然と姿を消したそうです。 姿を消して三日経ちますが、その後の足取りは全く掴めません……」 工藤は姿を消した愛理の足取りを追ったが、消息は掴めていない。  「そんな馬鹿なことがあるか!! あいつは、あの方の催眠術で俺達から離れられない…

続きを読む

催眠道化師(62)

 突然、愛理の前に現れた二人の催眠魔女 『君島 まどか』 と 『北条 瑠璃子』   「あの…… これから、どこに行くのですか?」 愛理は車に乗せられ、何処かへ連れて行かれるようであった。  「愛理さん。 あなたはこれから、私達の元で保護します。 愛理さんは、邪悪な催眠術師の呪縛に囚われているわ。 だから、まずその呪縛を封じなければならないの。 その為には、邪悪な催眠術師から、あなたを…

続きを読む

催眠道化師(61)

 「愛理…… お前は何も心配しなくていい…… 今度のオーディションに集中するんだ!!」 警察で取調べを受けている沢田は、面会に来た恋人の、『北川 愛理』 を気遣う言葉をかけた。  「圭吾さん…… 何でこんな事をしたの? 圭吾さんは人を刺せる人なんかじゃないわ…… 神山さんのことを、とても尊敬していたのに……」 愛理はなぜ、沢田が秀人の事を刺したのかわからなかった。 沢田は取調べでは、秀人と…

続きを読む

催眠道化師(60)

 「立花先生…… 少しは休まれたほうがいい……」 坂崎が病室で秀人の回復を祈り続ける立花 澪奈に休むように言った。  立花 澪奈は秀人が刺されて病院に運ばれてから、一度も家に帰っていない……  秀人が病院に運ばれてから、丸三日が経とうとしているのに、片時も秀人の傍を離れようとしないのだ……  「気持ちはわかりますが、このままでは立花先生も倒れてしまいますよ…… ろくに食事も睡眠…

続きを読む

催眠道化師(59)

 「立花さん!!」 病室に三枝 枝里子がやってきた。  「三枝さん……」 立花 澪奈の声は今にも消えそうな声であった。 その目は泣き腫らしおり、すっかり憔悴しきっていた……  「警視庁の記者クラブから、事件の事を聞いたわ…… まさかとは思ったけど……」 三枝は秀人が刺されたという情報を入手して病院に駆けつけた。  「三枝さん……」 立花 澪奈の目から再び涙が溢れた…… そして、…

続きを読む

催眠道化師(58)

 秀人の緊急手術は成功した。 だが、まだ意識は戻らず、予断を許さない状況が続いていた……   立花 澪奈は病室で秀人の手を握りながら、ひたすら回復を祈った。  〈兄さん…… 秀人さんを助けて…… お願い……〉 亡くなった兄、『晴彦』 に秀人の回復を願う。 兄を失い、最愛の人である秀人まで失うわけにはいかない……  坂崎は懸命に秀人の回復を願う立花 澪奈の姿を後ろで黙って立ってみ…

続きを読む

催眠道化師(57)

 秀人が沢田の恋人の、『北川 愛理』 に腹部をナイフで刺された!! 突然の愛理の凶行に、沢田は我が目を疑った。 まさか、愛理が秀人を刺すとは……  「神山っ!!」 沢田は刺された秀人の元に行き、苦しむ秀人を抱きかかえた。 刺された腹部から夥しい血が流れ出ている……   「ぐうぅ……」 刺された秀人は傷口を手で押さえ、うめき声をあげながら苦しんでいた。  「愛理!! お前何でこん…

続きを読む

催眠道化師(56)

 秀人は沢田の罠に嵌った!! そして、己の顔面に沢田の渾身の右ストレートが迫る!!  秀人は迫り来る拳に耐えるため、歯を食いしばった。 とどめに放ったパンチの打ち終わり狙われた。 もはや避けることは不可能であった。 ただ、耐えるしかない……  グシャッ!! 肉と骨が潰れるような鈍い音が秀人の頭の中に響いた。  沢田の右ストレートが秀人の顔面に炸裂した。 凄まじい衝撃。 秀人の顔…

続きを読む

催眠道化師(55)

 「来いっ!! 神山っ!!」 沢田が秀人を挑発するように叫んだ。 沢田は秀人と打ち合う覚悟を決めている。  その声に触発され、秀人はもう闘争本能を抑えることが出来なかった。 打ち合いという展開になり、秀人のアドレナリンは全開で放出された。   そして、我慢の限界を迎えた秀人が動いた!!  秀人は一気に前に出てきて、沢田との距離を縮めた。 狙いはボディーだ。 もっとも得意とする接…

続きを読む

催眠道化師(54)

 沢田は秀人と自分には、大きく戦闘能力に差があることを痛感していた…  現役時代は二度勝ったが、今のその頃の秀人では無かった……  自分は引退してから、荒んだ生活を送っていた…… 初めてのタイトルマッチで、チャンピオンに顎を砕かれ、そのまま引退した……  現役を続けようとは思わなかった。 沢田の心は一度の敗北で折れてしまったからだ。  沢田は怖くなったのだ。 顎を砕かれ敗…

続きを読む

催眠道化師(53)

 秀人と沢田の三度目の対決が幕を開けた。 お互い、数秒睨み合ったあと、それぞれファイティングポーズをとった。   秀人と沢田は現役時代は同じ階級だったが、体型もファイティングスタイルも全く違っていた。 身長は沢田が秀人より5センチ高い。 そして、大きく違うのがリーチの長さだった。 沢田は秀人より腕の長さが10センチ長いのだ。   そして、現役時代とはお互いかなり体重が違っていた。 秀…

続きを読む

催眠道化師(52)

 秀人と沢田は、アパートの近くにある人気の無い場所に向かって歩いていた。 道中、二人は一切口を利かなかった。 三度目の対戦…… しかもリングの上ではなく、観客もいない場所での戦い……  二人の胸中はどんな思いなのか……  秀人の心は昂ぶっていた。 三度目の沢田と対戦するチャンスが訪れたことが嬉しかった。 現役時代、二度煮え湯を飲まされた相手にリベンジが出来る。 たとえ、リングの上では…

続きを読む

催眠道化師(51)

 秀人が帰ったあと、立花 澪奈は一人でクリニックに残り考えを巡らせていた。 先ほど秀人に催眠術をかけて失っている昨日の記憶を呼び戻してみたところ、やはりあの時、亡くなった兄の晴彦の魂が秀人に乗り移ったとしか思えなかった。  しかし、そんな現象が実際に起こるのだろうか?   立花 澪奈はある仮説を考えてみた…… 『残留思念』  秀人はあの時、あの公園に残る兄の残留思念を吸収してし…

続きを読む